『レイジー・ヘイジー・クレイジー(同班同學)』

●『レイジー・ヘイジー・クレイジー(同班同學)』
 (監督:陸以心(ジョディ・ロック/出演:郭奕芯(クォック・イッサム)、廖子妤(フィッシュ・リウ)、麥芷誼(マック・チーイ)、王宗堯(グレゴリー・ウォン)、陳靜、林婉靜、邵音音、蔡潔、盧惠光、曾國祥、徐天佑、蒼井空、李拾壹、江嘉敏

同班同學海報


彭浩翔(パン・ホーチョン)作品の脚本3本+プロデュース作品の脚本2本を経て、ついに監督デビュー果たした脚本家の陸以心(ジョディ・ロック)。
元からジョディさんの脚本で本作を制作することは決まっていたそうなのですが、プロデューサーであるパン・ホーチョンが女性監督を探しており、「それなら私に撮らせてよ!」ということで初監督作として本作が決まったのだとか。
プロデューサーの力とそれをサポートするスタッフの力って偉大……。



パンちゃん作品を観るたびにこの人は何故にここまで女心を繊細に、そして奥の方をえぐるような的確さで描けてしまうのか?と、疑問にすら感じていたのですが、本作を観てああ、やはりそうだったのか、と確信。
もちろんジョディさんの起用以前から「女性の事は解らない、難しい」などと発言しており、その上であれらの描写が出来ていたパンちゃんなのですが、ジョディさんが加わる事によって若さ溢れる脚本となり、より一層きめ細やかで複雑な女心を描くことが出来ていたのです。

但し、監督としては当然ながら未経験の素人同然な上、自身で書いた脚本を演出せねばならないという大きな難題が待ち構えていたわけですが、そこはキャリアのあるスタッフの皆さんにかなり助けられてここまでの仕上がりになったのだと思わざろう得ない部分も多少なりとも感じてしまったのは致し方無い事。
実の所、香港での本作の感想を読むと、見かけ倒しで宣伝と内容が一致してねーよ!という意見もちらほら。
センセーショナルなテーマ、そして香港映画に於いてヌードもある為にニュースにも頻繁に取り上げられたので、バジェットの多い作品を観に行く感覚となってしまったのかも、と想像してみたり。

今まではパンちゃんが脚本や現場で面白い要素や演出を盛り、作品としての面白さや深味を増していたのですが、それらを完全に削ぎ落として原石のような状態と化してフレッシュさ溢れる仕上がりとなっていたので、私個人としてはインディーズ・ムービーにちょい足しした程度の加減で作った、気持ちが一直線に表れた作品として『レイジー・ヘイジー・クレイジー』はとても愛らしい素敵な出来になったと思っているのです。

女子高生3人の友情、仲間意識、援交、嫉妬、恋愛及びセックス観、家族との関係などを瑞々しく描いた作品で、女性なら例え共感はせずとも納得してしまう描写の連続。
援交を始めるにせよ少女たちにはそれぞれの事情があり、よくある援交のタイプ(※但し我々が思い描く日本の援交のスタイルというよりも元締であるクラブのママがいる援交“クラブ”に近いもの)もあれば、おぼこい娘が好きな男性ひとりに囲われる愛人スタイルもあり。

内容が内容だけに当然ヌードシーンもあるのですが、一部のシーンを除いて、それらの裸はいわゆるエロを意味する裸なのではなく、彼女らの心情の吐露や素直さの表れで、言葉通りの「裸のままの女の子達」を意味する本音のシーンとなっているのです。
体育の授業後のシャワールームで裸になり、彼女らの根城となるアパートの屋上で裸になり、そして裸になって浜辺を駆けまわるという。
あくまでも性的な記号のヌードなどではなく、解放と開放のダブルミーニングにより、前に進む為の全裸なのです。

エロ目的以外で絶対に必要であるヌードを撮ってみたいという、女性の目線ならではの表現の仕方。
解放観に溢れ、未来に向かう姿の表現がまだまだ青臭いと感じてしまうのも監督第一作ならでは。

そんなキラキラと輝く青春につきものなのはもちろん恋愛でありセックス。
援交をしてしまう女の子達なので、セックス観に関しては結構オープンだったりする為、それによって引き起こる友情と男女間での問題も発生。
しかし女性による視点で描かれているので、「気軽にセックスする女の子とお付き合いする純朴な彼女」というのを無意識に差別をし、関係を深めようとする男のズルさがきっちりと複数描かれているのもある意味、見所。
鑑賞した男性らはその部分に対してどう感じていたのか、はたまたハッとさせられたのか等、その反応が私の興味の対象だったり。

最近でこそ青春映画が作られてきた香港映画界。
4年前の台湾映画『あの頃、君を追いかけた(那些年,我們一起追的女孩)』の爆発的ヒットに加え、2015年の秋、香港で観客動員数を塗り替えている『我的少女時代』の存在により、これから先、香港製の青春映画が増えてくるのかもしれません。
その先駆け的存在として、こういった若い同世代のための作品がようやく香港で、しかも女性の手によって生まれたという事実を知っておく為にも必見の新作映画です。
実は一昨年のストリートダンス青春映画『狂舞派』の大ヒットにより、イマドキな若者映画が一気に増えるかと期待していたのですが……残念ながら大して無かったですね。

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