『疾風スプリンター(破風)』

●『破風』
 (監督:林超賢(ダンテ・ラム)/出演:彭于晏(エディ・ポン)、チェ・シウォン、竇驍(ショーン・ドウ)、 王珞丹(ワン・ルオダン)、連凱(アンドリュー・リン)、歐陽娜娜(オーヤン・ナナ)、陳家樂(カルロス・チャン)他

破風海報


《破風》それは《風除け》を意味する言葉。
つまりロードレースに於けるアシストの意味。

台湾南部自転車ロードレースの強豪である炫光車隊(チーム・ラディアント)に所属する男子3人がライバルチームと戦い、台湾各地で連戦を繰り広げて台湾中を廻るロードレースパートなのが前半。

中盤はあれよあれよという間に何故だか恋愛パートにシフトして「ライバル」の意味合いすらも変わってしまう。

そんな恋愛ドラマがどんどん進んでしまい、そちらがメインの話となってしまうが為に、まさかこのままラストまでいってしまうんじゃ……?と不安になるも、更なる「えっ!?」というびっくり展開が怒濤の如く発生。
そこでとんでもない力技を発揮するのですが、いわゆる無茶苦茶な展開ではなく、見事にきちんとロードレースの話に戻し、興奮のラストで締めるという作品。
ネタの特盛り全部盛りに加えて、更に汁だくにしてしまったような映画。
そんな状態なのにも関わらず、ひとつひとつのエピソードがバラバラにならずにどーーーん!と綺麗なエベレスト状態で高くそびえて盛られ、一品として提供されるわけなのですよ。
ダンテの神曲の新章がまた新たなステージに到達してしまったというものです。



ロードレースに関して見事に無知な自分が観ても自転車競技がなんたるかが実況解説により理解出来る仕組みになっている丁寧さなのもとても嬉しい作品。

ロードレースという団体競技でありながら、個々の闘いも同時に描いている為、俯瞰と主観が混在しているような状態を両立させているので、先に書いた特盛り感が余計に増して感じられるのでありました。

しかも台湾中を巡るレースが故に「上から看る台湾」ことドキュメンタリー映画『天空からの招待状』を彷彿とさせる映像美で綴られており、景観の美しさや地形の多種多様性を自転車に乗りつつ楽しめる目線で撮られたカメラ、地面ぎりぎりという低位置撮影カメラ、そして上空から……などと様々な視点から観ることが出来るのはとにかく圧巻。
レース中の撮影も、特にこの台湾パートが試行錯誤していると見え、そこを見るのも面白いのであります。
走行する自転車の背後からカメラ搭載バイクが追跡撮影をしているのですが、中継車と見せかけて、それがしっかりと画面に写り込んだままというシーンなんていうのもあり。
そしてそのバイクで撮られた映像が同時にそのシーンで使われる為に「このカメラで撮影していたのがこの映像なのか!!」と思わず言ってしまう編集、つまりメイキング映像と完成映像を同時に見せられる半ドキュメンタリー映画ともいえるのです。

今回の林超賢(ダンテ・ラム)監督はドラマの中で登場人物らをいじめない代わりに『激戦 ハート・オブ・ファイト』に続き、キャストには長期トレーニングをさせていたのですが、その結果、撮影直前に主要キャストのひとりであった阮經天(イーサン・ルァン)が怪我により降板。
その代わりとして『サンザシの樹の下で』の竇驍(ショーン・ドウ)が急遽登板となったという経緯があったのです。

そう……。並走しながら手を繋ぎ、そこでバトンタッチという最高にキュンキュン♡してしまうシーンが本当なら彭于晏(エディ・ポン)とイーサン・ルァンだったはずなんですよ!!
……とはいうものの、好演したあっさり薄めなルックスのショーン・ドウと大きな子犬であるぽんスケ、といった良い対比が生まれたので、結果的にこれで良かったのです。

男達の友情、男達の特訓、男達の闘い(以下「男達の」は略)ライバル、師弟関係(しかも一部、やけに艶やかにふたりっきりで風呂にて密談をするという謎なシーンまであり)、裏切り、荒ぶり、嫉妬、不正行為……などなど。
BL連続ドラマ1クール分以上の要素が2時間に凝縮されている上にプロとアマの違いによる確執と恋愛が同時にぶっ込まれているのです。
つまりこれだけ男だらけの濃密密着いちゃこらどつき合い……どころかどつき愛があるのですから、この作品に関しては男女の恋愛なんて物は無駄なノイズでしかないのですよ!
いや、キャスティングやスポンサーなどの大人の事情があるのは理解しているつもりなのですが。
とはいえ、よくぞまぁ最終的にここまで交通整理が出来たな、と感心するばかり。

そんな恋愛パートはバッサリとカットし、ほんの一瞬だったのに鼻血を噴いてしまった男達が連なって脚のマッサージをし合うカットを合間合間に入れてくれたら良かったのに!
男だらけのマッサージ版『ムカデ人間』は本当に最高でございました。ごっつあんです!

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