2016年01月の記事 (1/1)

2015年 面白かった映画 映画祭&特集上映編

2015年 洋画編】、【2015年 日本&アジア映画編】の続きです。
今年は海外へ一度も行かなかった上に、ディスクでは新作も観ずに旧作ばかりだったので、国内の映画祭と特集上映からのピックアップ。数本に関しては長文となってしまった為に別エントリーをしているので、御興味のある方はそちらも読んで頂ければ幸いです。こんな駄文というか単なる覚書状態のような文ではありますが、興味を持って頂いて新たなる作品との出会いのきっかけとなれば幸いなのですが。


【2015年 面白かった映画 映画祭&特集上映編】

『神に誓って』@東京国立近代美術館フィルムセンター
『BOL ~声をあげる~』@東京国立近代美術館フィルムセンター
『アバディーン(香港仔)』@第9回大阪アジアン映画祭2015
『セーラ(雛妓)』@第9回大阪アジアン映画祭2015

『点対点(點對點)』@第9回大阪アジアン映画祭2015

※何故『點對點』という題なのかと思ったらここに登場するグラフィティ(塗鴉)も指していたという。
香港のあちこちに散りばめられた点点だったり不思議な図だったりという謎のグラフィティを辿りながら、誰にでも心に秘めている謎とその答えを見い出していくというのがテーマ。
謎の点点は繋ぐと線となり、それはいずれ何を意味するかというのに気付く。そうやって人と人とが繋がり、過去と現在も繋がり、自分がいる場所、つまり生活している所について次第に理解していくのである。
主役を大陸から香港に赴任してきた中国語教師という、外からの目線で自分達の地を見てもらうのと同時に自分達も改めて見なおすという、香港人による香港の為の愛らしい優しいインディーズ映画で、見事なほどの香港街歩き映画。日本も香港の歴史に関わっているので我々も知らなかった事実を見つめ直すのにもいいきっかけとなるかと。

『コードネームは孫中山(行動代號:孫中山)』@第9回大阪アジアン映画祭2015

※廃棄物として学校の倉庫に放置してある孫文先生の銅像を盗んで売ろうという間の抜けた高校生たちの企みは日本の学校に二宮金次郎像がある限り、日本人にもよく解る滑稽さだろうし、学校が嫌いじゃなかった人以外はきっと皆、楽しい作品となるはず。
そんな緩やかで呑気でコミカルな作品に見える本作だが、実は台湾の貧困事情、しかも若者にも及んでいる現実を描いている。貧困という悲しい社会問題について理解し反省した彼らは大人の世界に直面し始めてしまい……などという姿を眺めてホロッとしてしまうのだ。
とはいえ大半が本当に楽しく、易智言(イー・ツーイェン)監督の演技経験が皆無の子に対して演出が素晴らしい。
街中でスカウトした主演の詹懷雲(ジャン・ファイユン)、魏漢鼎(ウェイ・ハンディン)がぽわわーんとした素の高校生で本当に可愛いのだ。この緊張感があるんだか無いんだかという持ち味は素人でないと醸し出せないので、それを見事、最大限に活かした易監督の演出力を半端なく発揮しているのであった。
具体的にいうと演技力が無く表情の乏しい素人でも表情豊かに魅せる方法、それは顔にお面を被せてしまい、無言でオーバーアクトをさせるという事。こんな力技であり大発見が成せるのは長年のキャリアの賜物としか言いようがない。しかも一人や二人の素人ならなんとかなったとしても群衆の素人を使ってここまで魅力的にしてしまうとは。
因みに素晴らしいのはキャストに関することだけでなく、映像そのものも素晴らしい。
撮影した時期が雨期だったのかどうかは定かではないが、夜の台北の路上が常に濡れており、それが功を奏して街の明かりやネオンが反射し、暗い夜道なのにも関わらず画面全体に様々な色を差して華やかに艶やかに見せているのである。
そこにパステルカラーのあのユルい萌えキャラお面が登場するというアンバランスさ! この崩し加減、お見事!
例えば孫文先生の三民主義などの革命理論がもしかして随所に散りばめられていたのかな?ということも個人的に気になるのでいずれ改めて見直したい。

『クボ:化け物クロニクル(KUBOT: The Aswang Chronicles 2)』@第9回大阪アジアン映画祭2015

※『牢獄処刑人』のエリック・マッティ監督によるフィリピン映画。
アクションホラーであり、西部劇であり、『ドイツチェーンソー大量虐殺』feat.『エボラ・シンドローム』のアフリカンバーガーであり、アレとかソレとか盛っても盛っても終わらないサービスがあり、しかもコメディ要素までもがあり。
実は本作は3部作(とはいえ3作目はあくまでも予定の作品)。頼むから1と3を観せて!……と思っていたら、第1作目の『バトル・オブ・モンスターズ(TIKTIK: The Aswang Chronicles)』がDVDスルーとして日本でリリース。

ヤバい! 『クボ』が初っ端から飛ばしてたので期待していたのですが、開始1分半で既に美味しい画が! ビニール袋にアレとかソレとかつまり臓物の類いが詰め込まれてるという。なんと最高な。
1作めを観て如何に『クボ』を理解出来ていなかったかが判明した……という程にアスワン(字幕では単なる吸血鬼と表記)が何たるかの説明が詰め込まれていたのだった。未だ嘗て知らなかったフィリピン吸血鬼の設定がとてつもなく面白い。
1作目なので風呂敷を広げる為の展開故に2作目の様な初っ端からのフルスロットルさは無いのですが、スゴいぞ……アジア映画というよりもまるでメキシコ辺りの映画を観ているみたいな事になってるのだ。どちらにせよ大好物なのですが。
1作目でアスワンの設定と人間との関係を全部語り、『クボ』の為の風呂敷を広げているのはつまり『クボ』はその辺の面倒臭い説明を全てすっ飛ばしているが為に面白要素のみを次々と詰め込む事が出来、それ故に大傑作の大娯楽作となったのであった。
『クボ』の冒頭のあの婆婆ってもしや……!という点があったので『クボ』を是非とも観直したい。

『いつか、また(後會無期)』@第9回大阪アジアン映画祭2015

※馮紹峰(ウィリアム・フォン)と犬、馮紹峰と犬、馮紹峰と犬、時々馮紹峰と陳柏霖(チェン・ボーリン)を撫で撫で……という、萌え割合の高い楽しいロードムービー。そして大阪アジアン映画祭にて同時期に上映された『セーラ』に続いて流れる『ケ・セラ・セラ』がこんなにも意味を違えて受け止める事が出来るとは。
馮紹峰は現代物だと良さ10倍増し。

『単身男女2(單身男女2)』@第9回大阪アジアン映画祭2015

※杜琪峰(ジョニー・トー)&韋家輝(ワイ・ガーファイ)による『単身男女』の続編で、大陸でヒットさせる為に銀河映像内に密かに存在している拝金マニュアルに従って作成された映画なのでは……という幻想が広がりまくる、2人の手際の良さがやたらと光って適当に面白い、だけど心が何も入っていないが故に逆に超スゴい!という映画。
今回も高圓圓(カオ・ユエンユエン)の魅力が何ひとつとして解らないまま、私の中での「アイコラ女優(清楚な美人さんだけど他に誰が演じても変わりなさそう、の意)」という位置づけは変わらぬままなのですが、だけどお金は大事。そういう映画。
展開がどうなるのかは伏せておきますが、3作目を作った時こそがワイさんの気の狂った脚本の見せ所だと信じてなりません。
サブタイトルは『火星人逆襲』で是非ともよろしくお願い致します。
あと、私でもキュンとくるような高圓圓の魅力もそろそろ見せてください。

『バングラシア(BANGLASIA 猛加拉殺手)』@第9回大阪アジアン映画祭2015

『スリードア・ホラーズ(鬼節:三重門)』@マレーシア映画ウィーク



※低予算ネット映画のオムニバス故、ゴア度が皆無とはいえ各自工夫していて面白かった。特に楊毅恒(エドモンド・ヨウ)の『幻日』と黑貓の『車魂師』の2作が飛び抜けた出来。全6作に登場するマレー語を話す警備員のおっさんが気付くと全体の統一感を醸し出しているのもなかなか面白くて良い試み。
ネットムービーなので、シネマート六本木で行われたマレーシア映画ウィークで世界初のスクリーン上映となった。
1作品の予算が日本円だと数十万程度の本当に低予算で作られている作品ばかりで、マレーシアの若手監督のショーケース的オムニバスと言ってもいいのかも。土着ネタが特に無かったのも今時の若い監督達の作品なんだなぁ、というのも解り面白かったです。

『細い目』@午前0時のフィルム映写会~ヤスミン・アフマドとエドワード・ヤン“夏の想い出”特集
『グブラ』@午前0時のフィルム映写会~ヤスミン・アフマドとエドワード・ヤン“夏の想い出”特集
『ムアラフ 改心』@イスラーム映画祭2015
『漁光曲』@SOUND OF SILENCE~中国無声映画と音楽の会~
『八百屋の恋(勞工之愛情)』@SOUND OF SILENCE~中国無声映画と音楽の会~

『西廂記』@SOUND OF SILENCE~中国無声映画と音楽の会~
※1927年の作品で、西遊記の蜘蛛女の妖怪のエピソード。
既にこの時、三蔵法師は美人でセクシーだった事に驚愕。夏目雅子が初めてではなかった! そしてパンツ一丁のヌルヌル妖怪のボディラインが周星馳作品に登場しそうな絶妙な気持ち悪さで最高……! 全てのキャラが立ちまくってた大傑作。

『盤絲洞』@SOUND OF SILENCE~中国無声映画と音楽の会~

『紅い剣士(紅俠)』@SOUND OF SILENCE~中国無声映画と音楽の会~
※1929年作品。テンポが非常に良く、字幕でまさか自ら「予想外の展開が」と突っ込みまであったという驚愕。
芸妓が師匠となる白猿老人から武術を教わり復讐譚となるストーリー。そう、武侠映画第1作目は女性の話なのだ。
実は訓練シーンが無いので、どの作品から入れられるようになったのかをいずれ知りたくなったのだった。
『SOUND OF SILENCE~中国無声映画と音楽の会~』で上映された無声映画そのものはどの作品も大変面白かったのですが、受け止め方の違いがあったせいなのか、中華圏のミュージシャンの方々の音の付け方がミニマル打ち込み系で鳴りっぱなし故にクラブのVJ状態でムムム……という部分も。
それに対して流石に大友良英さんの生演奏は素晴らしいかった。しかも大友さんは100分もある中国武侠映画第1作目ともいうべき『紅い剣士』の担当で、ずっと一人で演奏し続けてたので、相当の労力を費やされたのではないかと。エレキギターと一部ピアニカという、未だ嘗て体験した事の無い無声映画の生演奏は新鮮で、作品共々良い物を観る事が出来ました。

『グラン・ノーチェ!最高の大晦日(Mi Gran Noche)』@第12回ラテンビート映画祭

※10月に正月番組を収録している舞台裏モノという正に10月に開催されたラテンビート映画祭で観るのに最適な作品。
毎度、手を替え品を替えのイグレシアですが、コメディなのに気軽に観れない濃度の高さ。
スペインのスタァ☆の濃厚さをリアルで理解していない自分がこんなにももどかしくなるなんて!
怒濤の量の台詞の応酬と最後のカオスは毎度の事ですが、その半分位が芸能界の人達故に濃い……。大御所もアイドルもスペインの歌ってこんなにも濃かったのか。観てる最中は半口開けて楽しんでいたものの、後から胸焼けが起きるほどの許容量オーバーに。
『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』というサブタイトルの付け方からして、もしかしたら一般公開の可能性もあるのかもしれないのですが、正月番組のド派手なショー、しかも1stシーンから歌と踊り、しかも終始続くのでバルト9の切れのある高音低音という音響、しかも大きなスクリーンで鑑賞出来て本当に良かった。もう一度、あの濃厚さを味わいたい……。

『バン・バン!(BANG BANG!)』@インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン 2015

※『ナイト&デイ』のインドリメイク作品。
人物を一部増やしたり削ったりしてるもののほぼ同じ……なのですが、ただでさえキャッチーなシーンや展開なのにも関わらず、『バン・バン!』方が遥かにはったりが効きまくっていて最高……!! むしろロバート・ロドリゲス風味にもなっていたのですが、更に炎が多かったという。
オリジナルのトムちんは唯一無二のキラキラの持ち主ですが、手足の長いリティクが構えるポーズはやはり映え方が格別で、また別の華やかさがあったのでした。あとオリジナルには無い最後の「車」のトンデモシーンが悶絶の面白さ。そしてラストの着地方法がほんの少々違ったのですが、結果、良い話に。
『バン・バン!』は日本公開して欲しい、めちゃめちゃ面白いアクションロマコメ作品ですし、インド映画だと知らずに観ても、このド派手なアクションエンタメならば誰にでも楽しめるといった映画。リティクの波打つ様な超絶スゴいダンスも最初と最後にだけ拝めちゃうよ♡
『バン・バン!』に登場するバーター企業はピザハットやマウンテンデュー等なのですが、ピザハットの登場の仕方が衝撃的。
とんでもない所にピザ・ハットの店舗が建っていたのです! どんな崖っぷちなんだよ、その店!! ……というのも見所のひとつ。

『銃弾の饗宴-ラームとリーラ(RamLeela)』@インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン 2015

『破風』@東京国際映画祭2015
※長文の為、別エントリーにて。

『復讐の町(Badlapur)』@インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン 2015
『愛のカケヒキ(撒嬌女人最好命)』@2015東京・中国映画週間

『百日草(百日告別)』@東京国際映画祭2015
※長文の為、別エントリーにて。

『レイジー・ヘイジー・クレイジー(同班同學)』@東京国際映画祭2015
※長文の為、別エントリーにて。

『If only(Kaash)』@東京国際映画祭2015

『モンスター・ハント(捉妖記)』@2015東京・中国映画週間

※大陸でサブカル的な方面からのネット口コミにより若い層に大ヒット(意訳)だと耳にしていたので、家族向けファンタジー作品なのに何故にそんな妙な広まり方に?と疑問に思っていたら、まさかの男妊娠出産育児映画で眼がギンギンとなり、前のめりで鑑賞。
キャストも良く、特に湯唯(タン・ウェイ)ちゃんの古装でコミカル演技は今まで観たことがなかったので更に惚れた!
ミュージカル的要素もあり……というよりも、中華的な音楽故に気付き辛いのですが、実はインド映画に於ける歌とダンスと似た構成をした、バラエティに富んだ作品。
種田陽平さんが美術担当で、村に建つ小さな家の数々や室内の様子がとても可愛いのだ。そこも見所。

『孤島の葬列(มหาสมุทรและสุสาน)』@東京国際映画祭2015

『今は正しくあの時は間違い(지금은맞고그때는틀리다)』@東京国際映画祭2015

※ホン・サンスパラレルが炸裂。
しかも例の飲み屋の隣のテーブルの酔っ払いの管巻きを眺める様な画面が大半(今回は先に進むトークだけど)。更にはジェヨンさんの酔っ払いバリエーションのあれこれどころかきゃっ♡を六本木の大画面で観れたので余は満足じゃ。お腹たぷーん。

『シュナイダーVSバックス(SCHNEIDER VS BAX)』@東京国際映画祭2015

※殺し屋VSターゲット、と書くと過去に幾らでもある映画を思い浮かべそうなものですが、何だこの変な映画は!
ものっすごい沼映画で、沼地という屋外なのにも関わらず密室物並みの閉塞感。沼地にあるA点からB点へ移動するのにも沼を掻き分けねばならないし人間関係にも深い沼が!

『ヴィクトリア(Victoria)』@ドイツ文化センター

※ワルと良い関係になる外国人娘や犯罪前のリハーサルの緩さ等はあれど、それはこの内容全てを1カットで撮影してしまうという制約の為の削ぎ落とし、更には欧州映画特有のもっさりさ故の物かと思い観賞したので面白かった。
『激録・ヴィクトリア密着1ナイト!』というべき緊張感が終始持続されていた撮影は本当に凄い。
軽い会話の中で「ドイツではエレベーターの中で口をきかない」という部分があったのですが、そこで笑いが起きたのですが一体何なのですが、このドイツギャグ! モーツァルトに関する一言でも笑いが。こういったローカルな人々にウケる様子がドイツ文化センターという場での鑑賞に於いて興味深く面白かったりもしたのでした。

『華麗上班族』@第16回東京フィルメックス
※長文の為、別エントリーにて。

『酔生夢死(醉・生夢死)』@第16回東京フィルメックス

※本作に於けるとんでもなく素晴らしい点のひとつに「同性“愛”」を描いているのではなく、あくまでも「ゲイ」そのものを描いていたという事。これはありそうで無かった描写。例えば『GF*BF』なんかでも描かれてはいたのですが、そのものに関してはサブプロットで、メインではなかったので、そういった点でもとても新鮮。
『醉・生夢死』となる前のタイトルは『愛是藍色的』、つまり「愛は青色」という意味。一番象徴されているのは酒で“LOVE”と書いて火を点けると青い炎になるという場面。
登場する女性らだけではなく、広い意味での青が作品内ではとてもたくさん使われており、気付き辛いでしょうが実は男性も青い服を着ています。飲んでた酒(アブサン?)も青と捉えるべきなのかなぁ、などと。主人公である老鼠のジーンズやTシャツも青ですし、刺青もある意味、青。ゲイのクラブで踊るダンサーの服やブリーフも青……などと言い出すと切りが無いほどに青尽くしの映画。
更に視覚的に面白いと思ったのは青い服、特に女性らの着ている鮮やかな青はそのものの意味だけでなく、反射により顔を白く/悪く見せる、つまり生きているのか死んでいるのか、などという効果にも非常に役立ってるよね……などという事をあれこれ考え始めるととても楽しい作品なのでした。画面に於けるこういった勝手な探りって大好き。
李白の『將進酒』を読んで味わったり……と、『醉・生夢死』は確認したい事だらけ映画故に1回の鑑賞だけではやはり無理なので、繰り返し観ては発見や考察が出来る作品だと思います。
因みに劇中で使われている市場は景美市場。

『あの日の午後(那日下午)』@第16回東京フィルメックス
※蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)と李康生(リー・カンション)のドキュメンタリーには変わらないのですが、延々と固定カメラで2人の会話を聞き続け、何を私は観ているのだ?という気分になりつつも2人の関係が色濃く解る素敵映像。
背後の山の木々がそよそよとしていたのに、2人が去った直後にざわわ……と強く揺らぐ奇跡がまたもや。
蔡明亮の映像には常に何かしらの奇跡が起こるのです。

2015年 面白かった映画 日本&アジア映画編

今年のエントリーも分類上の都合で“2014年に鑑賞した作品”ではなく、“2014年に公開した作品”というリストアップの仕方をさせて頂きました。
全体の出来が微妙でも、たったひとつだとしてもとんでもなく良い部分がある映画はやはり好きにならずにはいられず、そういった作品も含めています。
2015年6月14日にシネマート六本木というアジア映画にとってはとても大きな存在のミニシアターが閉館し、更には香港映画を定期的に上映してくれていた新宿武蔵野館が2016年1月30日から9月末日(予定)まで改装工事をする為、今年のアジア映画、というか韓国映画以外のアジア映画の一般公開は一体どうなるのでしょうか。顔が暗くなるばかりなのですが。



【2015年 面白かった映画 日本&アジア映画編】

『王の涙 -イ・サンの決断-』

『アゲイン 28年目の甲子園』
※【この中井貴一がすごい2015】第1位確定!
中井貴一が地に足が着いた現代劇での役、しかも肩の力を抜いた自然な演技をした結果、娘の部屋での寒い絶妙な間からギバちゃんとの掴み合いから何から何までが貴一無双。
麻雀牌の全てが貴一、あがりの全ても貴一という素晴らしさ。
余りの中井貴一無双状態で呆然……! 当然、褒め言葉でございますよ!
最近では珍しくフィルム撮影。ちょっとした台詞が次の台詞やシーンでさりげなく使われていたり、様々な立場の人の心情をそれぞれ描く心配りも良かった分、たったひとつのそのカットさえ無ければ……。絵的には欲しくなるのも理解出来るのだけど。

『激戦 ハート・オブ・ファイト』

『KANO 1931 海の向こうの甲子園』
※最初のうちののんびりムード(複数回、画面の左右に流れる大沢たかお含む)にどうなる事やら……と少々はらはらしたものの、気付くと自分が完全に甲子園観戦をして試合展開に手に汗握り、心の中でKANO団扇を振って応援していた! そんな映画鑑賞をしていることすら忘れてしまう映画。
しかも台湾側からこの内容を描いてくれたのも泣けるのであった。
映画本編に対してではないので余談になりますが、気になった事を追記しておきます。
ざっくりと「親日が云々~」と言っている人に対しては「呑気だねぇ」と適当にスルー出来たのですが、差別問題(広義)に関心がありつつも、自分の専門外が故にその事に対して中途半端に知識が「無い」と例えば「日本に植民地支配され、こんな美談にしてしまったのはおぞましい」等という、ぞわっとする発言を『KANO』に関しては幾つか目にしてしまった為、何故にそういう差別に絡めた見方しか出来ないのか?という、逆の問題が発生していたのでした。
逆に韓国に詳しい方の意見では「韓国では絶対に作れないタイプの映画で羨ましい」とも。
確かに歴史的にはその通りですし、我々以上に台湾の人達はその事実をよく解っているはずです。
この映画はそのことそのものを描いているのではなく、一個人と野球部の話を描いているので、そこを混同するのは違うと思うのです。
しかも『KANO』の監督は台湾原住民で、更に言うとプロデューサーは今までにどんな作品をどのような視点で撮っていた人なのか、そして嘉農の近藤監督は様々な部員達に対してどう接していたのか、というのは調べるとすぐに解る事なのに、自分の価値観で直結してしまう様子は怖いと思ったのでした。
それこそ『KANO』を全く同じ内容で日本の企画で日本人監督が撮っていたとしたら綺麗事のみを並べた、それはそれは気色の悪い映画となっていたはずでしょうけど、これはあくまでも台湾が作った作品で、統治下という時代にあった野球に打ち込む人々の青春映画というのが解らない人もいた様で可哀想だなぁ、と横目で見て感じたことを言葉足らずの部分もありますが少々。

『ミルカ』

『クリミナル・アフェア 魔警』
※つくづく感じたのは林超賢(ダンテ・ラム)及びダンテ組の1人とも言うべき脚本家の吳煒倫(ジャック・ン)は所謂ビジュアルな人々とは違う、台詞による説明は最低限に削ぎ落とし、映像できっちり物語るいう素晴らしい作品を作り上げる人達なのだと感心するしかない。ジョニー・トーとワイ・ガーファイもそうですが、監督と脚本家の間でどのような意思疎通がなされているのだ?と興味津々のダンテ組なのだった。
物作りをする人はこの職人技を共に学ぶべき。
なので、こういった作品の鑑賞が出来て本当に至福。
衝撃の映像の数々からチルアウトしてみたら、後からじわじわと凄さに圧倒される、それが『魔警』の魅力。
陥りがちな説明過多とは真逆の整理しきった作品ってすごい、と思わせる。
例えば「過去と現在」「心理描写と現実」などを描写していても同じ画面処理がずっと続き、ある程度観てようやく識別出来る作品が実は結構あるので、そういった視覚的な混乱を一瞬で識別させ、見事に回避しているのはかなり親切で手際の良さが光るダンテ監督。
しかもこの作品の場合、単なる心情や過去の描写というよりも精神的な部分に関する映像なので、この表現は的確なのではと。
病み監督や経験のある監督がこの作品のような描写を撮ると観ているこちらの具合も悪くなるのですが、それが無かったので魔警は凄く健康的なモダンホラーとサイコスリラーの合わせ技でスゲぇ!と思ったのですが、人それぞれ受け止め方が違って更に面白い事も判明していたり。
とはいえ、とても歪な作品ではあるのだが。歪な作品は美しい。
『クリミナル・アフェア 魔警』の編集はかの名監督、譚家明(パトリック・タム)によるもの。
久し振りに撮った『父子』(日本ではTIFF上映のみ)が震えるような大傑作(でもアーロンはクズ父親!)だったので、これを機に日本語字幕での上映、せめてソフト化にして頂きたい。

『スペシャルID 特殊身分』
いやぁ……。あれだけのトラブルでよく仕上がったなぁ、と感心する事態が撮影時、そしてその後も起き続けていた本作。
アクションは極上品、話はその合間に挟んでる程度なのですが、心情表現や会話やよりもボディコミュニケーションが豊か過ぎる作品なので、そこが面白いほどに味わえます。
昔馴染みのアンディ・オンと「わぁー♪」と再開して懐かしむのも束の間、お戯れは組み合いから始まるという徹底さが潔いのです。
闘ってる真っ最中に財布が飛び出て吹っ飛ぶという、無駄な程にリアルを追求したシーンがあるのですが、財布と共に何かがぴらり、と飛んでいると思い再確認をしたら、なんと利是封(いわゆるお年玉袋)で、芸が細か過ぎ!と、声にならない笑いをしてしまったのでした。
こういう比較は本来私の意に反するとはいえ言いたい事が。『特殊身份』のスゴさのひとつを挙げると、肝心のMMAに纏わるシーンが正直ちょっともにょった『激戰』(ドラマは本当に最高)よりも遥かにMMAの試合でありそうな実践的でリアルなファイトだったという事。しかも共にアンディ・オンが相手なので違いがね……。

『女神は二度微笑む』

『幕が上がる』
※平田オリザさんの原作というのも良かったのだろうけど、脚本家の喜安さんって今時の子達を使って等身大の台詞で語らせる脚本が本当に上手かったのですね。
感情豊かな高校生が語りそうな少々臭い台詞の取り込み方も上手く、後半に向けての二重の意味合いが誰にでも解りやすく描かれてるのも良いなぁ。

『ゴッド・ギャンブラー -レジェンド-』
※『グランド・マスター』で馬三を演じ、香港電影金像奬で助演男優賞を獲得した張晉(マックス・チャン)がゆるふわ王晶映画の『賭城風雲』では神経質そうな真顔キャラでアクション淡々とこなしているので、役者に対し、こういう振り幅の広さこそが昔ながらの香港映画の楽しさでもあり。時にはこういうのも観たいのよ……と気付かせてくれた映画でした。
2014年の旧正月にマカオでべろべろに酔ったゴキゲンな状態で観たので、その場で起きた事のみしか把握出来ず、広東語も中文字幕も目の前を通過してしまった為に幾つかあった不明箇所の答え合わせをした結果、不明だった箇所も日本語字幕で観ても不明のままで、何ひとつ理解が間違ってなかった! 恭喜發財!
でもこれでこそ王晶(バリー・ウォン)の通常運行で安心でもあったり。
そしてユンファ兄が広東語で話し、満面の笑みで歌を歌ったりするだけで本当におめでたい旧正月映画となったのでした。
大陸の時代劇とかもういいので、老後の楽しみでコメディにゆるゆると帰って来て欲しい……。
そんな姿を観る事が出来ただけでも幸せな作品。
初恋の相手を演じた肥媽瑪利亞(マリア・コルデロ)がユンファ兄の背後からぬっと登場する茶樓(飲茶の店)の『龍華茶樓』。マカオで『賭城風雲』を観た日、偶然ここで朝飲茶をしていたのでした。それも良い個人的な想い出。
龍華茶樓

『全力スマッシュ』

『唐山大地震』
※日本公開の直前に311の震災が起こり、日本では4年間お蔵入りのままだった作品。
冒頭の1976年の大地震が大スペクタルな特撮で『戦場のレクイエム』を彷彿とさせ、『戦場のレクイエム』以外で初めて馮小剛(フォン・シャオガン)を面白いと思ったのですが、大地震の悲惨さとエンタメ性と国策映画が三つ巴戦となる、観ている側の気持ちの置き所が相当カオスな状態となった珍作ともいえる作品。
しかもメリハリの効きまくったエンタメの国策映画という融合の妙で、面白さが悲劇を上回ってしまい、15分から20分起きにそれらがババーン!と登場する為に、悲劇的な内容なのにも関わらず、中盤からは「待ってました!」と掛け声をかけたくなる状態に。
更には人民解放軍も建物も土地も慰霊碑も全てのスケールがデカい!というのがビジュアルで確認出来る面白さ。
……などとあれこれ書きましたが、地震の悲惨さエグさこそ冒頭でがっつり描きまくっていますが、それ以外はその後の家族の運命を長年に渡って描いた作品。
その本質の部分を汲み取ってお蔵入りさせずに公開したのは良かったのではないかと想います。
被害に遭った地域の今の姿もきっちり写している作品なのです。

『恐怖分子』
※久々の鑑賞ですが、前に鑑賞した時よりも更に刺激的で圧倒される映像の数々。
どこを切り取っても画面作りが良く、センター合わせの構図なのに左右で動と静、密と疎などという対照的な物を一度に写しており、削ぎ落としまくった台詞なのに伝達する力強さにしびれまくりった至福のひと時でした。
登場人物が着ている「何故か背中に大きなパッチポケットが付いたシャツ」を見て「こ、これが80年代ファッションなのよ……!」と、変なもぞもぞ感まで味わっていたり。でも当時のファッションとしては結構なおしゃれだったのです……という余談も付け加えておきます。

『ソロモンの偽証 前編・事件』
※これは本当に良かった、と思った2015年の大傑作邦画。
さすがに役者の配役はバッチリだし、何よりも現実に起こりうるあらゆる嫌な事が見事に描かれていたのが秀逸。
それをどう覆すのかが後編。
そしてとにかくマツコちゃんが抜群に良過ぎて彼女は一体何者なのかと! そして不憫……。

『ソロモンの偽証 後編・裁判』
※現実に起こり得る生々しく嫌な事の数珠繋ぎだった前編を後編でどう転じさせるのかが最大の見所だったのですが、見事に言わねばならない事は劇中できっちりと言い、そして登場する多くの人物をそれぞれ丁寧に掘り下げて描いていた。
大人は勿論の事、中高生という同世代にこそ観て欲しい。とにかく松子ちゃんがね……なんて最後の最後まで良いキャラクターだったのでしょうか!
事件という謎を描く風呂敷を広げるのとは違い、紐を解いていく裁判というのは地味に感じてしまうのは仕方のない事なので、未見の方には前後編をぶっ続けで鑑賞して頂きたいです。
中学生ぐらいの子達が自分たちなりに一生懸命考え、それをその世代の口調で語らせている加減が本当に上手い脚本。
前編はいる!こういう子いる!という松子ちゃんのキャラ全開の加減が私の心を掴んで離さなかったのですが、後編では松子ちゃんでボロ泣きでしたよ。なんて良い子に育ったのでしょう……。
あと市川実和子ちゃんがたった少しの出演なのにやはり最高過ぎるので、彼女の存在も見所のひとつ。

『海にかかる霧』
※家父長制の話はよくされていたようで、確かにその通りなのですが、実はこの映画、SFホラーの構造や演出とも同じでもあるのです。船という名の密室物の恐怖描写の巧みさが存分に堪能出来ます。

『おばあちゃんの夢中恋人(阿嬤的夢中情人)』
※北村豊晴監督作の登場人物は皆、愛嬌満載。コテコテの笑いとリアクションと共に泣かせてくれる。
今や日本では殆ど無くなった人情物の原点回帰を台湾映画で見た気が。
嘗て盛んだった台湾語映画への敬愛が全編に渡り楽しく愛おしく描かれ、最後に解る仕掛けも嬉しい。

『クライム・キーパー 香港捜査官』
※この作品、ドニー先生がアクションシーン毎に結構ドラゴンを降ろしてるので面白いのですよ。
多分、最後に狂気&ドラゴンが見え隠れしたのは『かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート』。
初期ドニー先生作品ではこの様にドラゴン降ろしを見る事が出来たのです。
それにしてもなによりもスゴいのは香港・九龍城區にあった今や無き啟德機場(カイタック空港)での飛行機のフライトがビルの屋上でのラストバトルの背後で至近距離でされていること。
このビジュアルショック系アクション映像は今の香港映画では撮れないので、それだけでもかなりの貴重映像。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝/アイアンモンキー』
『神の一手』

『ザ・ヴェンジェンス』
※余りに凄くて最高過ぎて終始悶絶しつつ鑑賞。
身の回りにある物を使ってアクションをする最先端作品。ソムタム! ガイヤーン!
タイ映画に起こりがちなスロースターターも無く、初っ端からフルスロットル。ステゴロで闘ったらタイ人が最強というのを久々に思い知った素晴らしい作品。
シネマカリテの端から端までゴロゴロ何往復もした気分になりながら鑑賞したのでした。
ピタゴラ大惨事のスイッチを入れる素敵キャラの存在とか、普通ならそこで終わる爆破がまだまだ続くなど、見所しかないどころかインフレを起こしているのです。
ストーリーそのものがいきなり珍妙展開云々という事ではなく、衝撃的なシーンの発生により次のアクションシーンが頭に入らないというとんでもない事態が『ザ・ヴェンジェンス』には数回起きております。そんな映画です。
ものっすごいシンプルな話なのに、ここまで楽しめるのは今時驚異的。
こんな大傑作アクションが遺作となってしまったパンナー・リットグライ監督が今や亡き人となってしまったことが本当に悔やまれます。

『国際市場で逢いましょう』

『最後まで行く』
※次々と転がっていく展開が本当に面白い作品で観ていて息をも吐かせぬハイテンション。
やはり2時間以内の韓国映画は無駄を削りつつも要素をギュッと詰めているので傑作率がやたらと高いと思います。
極力削っていく作業をしないとこんなテンポと展開にはならないでしょうし。
むしろ削っていく作業って難しいんですよね。

『ドラゴン危機一発’97』
※シネマート六本木の『ドラゴン危機一発’97』の上映はとても綺麗なリマスターで、ドニー先生の雄っぱいも良い色で私は大満足でした……という話ではなく、多分マスターはアメリカ版から起こした物。
題&クレジットが英語で「!?」となりましたが、それ以外は普通に広東語。画像はオリジナル。
『ドラゴン危機一発’97』のリマスター版、もしかしたらリマスターに使える/出来る素材が英語クレジット版しかなかったのかも……という予想をしているのですが。
権利とかの問題もありますし、真相は闇の中……。
スクリーンで観た『ドラゴン危機一発'97』は谷垣さんが何回となく倒れ、何回となく生き返っておりました。
そして綺麗な画像をスクリーンで観ると結構格好いいカメラアングルだというのにも気付かされたのでした。
初日トークショーに行かれた方の御報告によると、谷垣健治さんは100カット以上出てるんじゃないかとのことでした。
同じシーンでも3回ぐらい死んでいるのだとか。
DVDで繰り返し観ているにも関わらず、観れば観る程、しかもリマスターした綺麗な状態でスクリーンで観ると今迄以上に「ドニー先生……お願いなので雄っぱいを隠して!」と頬を赤らめてしまう私。
しかもリマスターで更に綺麗になった雄っぱいですよ。私はどうしたら!
雄っぱいを隠して欲しいそのシーンの直前では、黃子華が着てるランニングを捲り上げているのですが、何故に彼までも乳がぷりん♡と丸出しになる程に捲り上げているのかという。
ドニー先生も子華もいっそのこと丸々脱いでくれていた方が何も思わないというのに! これがチラリズムの行き過ぎた結果か……。風でチラチラ隠れたり見えたり、そして走ると揺れる雄っぱいでもう私は……。
現代の進化したテクノロジーは怖い、という結論がここに。

『夜に逃れて(夜奔)』

『あなたなしでは生きていけない(不能没有你)』
※とても良い作品なのですが、感想を軽く検索してみた所、殆どの人がしんみり、じんわりと言っており、私の感想とは真逆に捉えている様で考え込んでしまった。こんないやな映画なのに!
ラスト寸前の台詞で語られる事を好意的に捉えられるのはどうなの?と。
故に敢えて何とは語らず観客に委ねる最後だと思うのですが。例えば途中で高雄から台北へ行くのにあの移動方法は台湾という土地を知っていると、それを想像するだけでお腹がものすごく痛くなる辛さや酷さなのですが。
……という事だけはとりあえず言っておきます。

『共犯』
※よくぞこんな子達を見つけてきたなぁという、思春期の子達の存在が非常に印象的な台湾映画。
ほんのちょっとだけ『メイド・イン・ホンコン』的でもあり。
学校の裏が林のような所になっており、その奥には沼があるという非常に美しく謎めいた素晴らしいロケーション!……だと思っていたら本当はそんな所は無く、映像マジックでした、と監督談。台北近辺でこの条件に合う場所が見つからなかったんだとか。

『きみはいい子』

『バトルヒート』
※想像を遥かに超えるトニー・ジャーのアイドル映画。
スーツを着て闘うトニー・ジャー、革ジャンを決めるトニー・ジャー、タイのゴーゴーバーでポールダンスを踊る女の子達が背景となるトニー・ジャー、ドルフ・ラングレンの周りをくるくる回るトニー・ジャー……! そしてまさかのチュー♡までもが!
この作品はアメリカ/タイの合作映画で、エカチャイ・ウアクロンタム監督作。
ロン・パールマン様がセルビア系マフィアのボスで御出演されているのもウキウキ。
因みに十把一絡げな邦題ですが原題は『SKINTRADE』という人身売買を意味する言葉。
『バトルヒート』はバディ物というよりもトニー・ジャーを如何にアイドルとして撮るかという、ドルフ・ラングレンが彼に対する萌えっぷりを眺める映画です(本作はドルフが脚本も書いております)。
コスプレやドルフの周りをくるくる回るトニー・ジャーとかよく解ってるわぁ。ドルフ、素晴らしい!

『八仙飯店之人肉饅頭』
※一家絞め上げ惨殺シーンに於いての子供ギャン泣きシーンは最初は見るからにお芝居をしてるのだけど、途中からちっちゃい子2人位はマジ泣きして引きつって汗びっしょりになってたね!……という部分も『八仙飯店之人肉饅頭』の見所。
血糊が多ければグロくなるかといったらそういう訳ではなく、本当のエグさは刑務所に入ってからが本領発揮、というのを教えてくれたのが『八仙飯店之人肉饅頭』。
スクリーンで観るとハンディカメラのスピード感や構図の格好良さ(ex.アンソニー・ウォンさんの巨乳を煽り構図で撮影)が桁違いに楽しい事が再確認出来たのでした。やはりTV画面とスクリーンでの鑑賞って受け止め方が違うのですよ。

『エボラ・シンドローム〜悪魔の殺人ウィルス〜』
※人生の大抵の物事は『RIKI-OH/力王』だの『エボラ・シンドローム』で語れると言ってしまう私ですが、ヒューマントラストシネマ渋谷で上映した『エボラ・シンドローム』は画質も発色も結構綺麗な上に粗口(広東語のFワード的な物)やシモ関係ネタもノリノリで訳して下さってるので、嘗て発売されたDVDを観た人達も更に楽したと思います。
時代を経ても酷さがブレないという、鬼畜映画界のお手本的作品。
アフリカのあの村に豚肉を買いに行った際に屍体に掛けられた布を捲る背後にガゼル一匹丸々吊るされている事が実は何度観ても衝撃的なシーンに感じてしまう私。
豚でも牛でも鷄でも羊でもなくガゼル! これぞアフリカの神秘!

『タクシーハンター』
『野火』
『インターセプション 盗聴戦』

『天空の蜂』
※ものっすごいボリューム、しかもその大半を原発を始めとした説明に費やしている原作をここまでの盛り上がりのあるエンタメ、しかも熱血中年映画に仕上がっていたという面白さ。
実は原作を「くどくどとウンチクが長すぎて全然展開が進まないじゃん、この小説……。」と、それが肝なのにも関わらず身も蓋もない事を思いながら読んでいたのですが、前半の掴みまでどころかストーリー展開に関わる必要最低限だけを残し、過剰なウンチクをズバッ!と省いてしまった潔さによりメリハリのある展開になっていたので個人的にはストレス無く気持良く鑑賞。
しかも前半の主人公とも言える少年が原作とは兄弟が逆で、それを上手く機能させるという整理の仕方。
随所にそっと散ればめられた「○○っぽい!」というのを楽しんで鑑賞した反面、子供にとってのヒーローとなった自衛隊の使い方がとても良かったので『ゴジラ』や『ガメラ』などの怪獣映画を上手く撮れる監督の作品として観てみたかった、というのが本音だったり。
1995年の小説の為、当然原作には無い「現在」のエピソードを足して繋げた事により、今ではちょっと古くなった部分もあるであろう事を上手く解消出来たのではないかと。こういう気の利かせ方は好感が持てるのでした。

『若さは向こう見ず』
※縁あって2回鑑賞し、おかわりの時には曲も覚えたので初見時よりも遥かに楽しく至福の161分となりました。
歌と踊りが彩り華やかで可愛く、ごく一部を除いて幸せなシーンに関しての比喩、そして超ハッピーな締めなので笑顔のまま帰れるという。地に足着いた話とはいえ前半後半、人物など対比が散りばめている巧みさ。

『黒衣の刺客』
※すげえ! 素晴らしい! 侯孝賢(ホウ・シャオシェン)なのに未だ嘗て無い位にこんなにもエンタメ感溢れるとは思わず!というのが何よりも一番の衝撃。……という事をほうちゃん映画を未見の人は真に受けてはいけない気がしますが、そう言わずにはおれないの映画なのです。
余りの美しさに降参。実は侯孝賢作品というよりも李屏賓(リー・ピンビン)作品として楽しんでしまった私。
今回はいつもの空気を捉える撮影というよりも風を撮り、屋内にいても屋外で何が起きているのかすら解るようにカメラに収まっているという。衣擦れと装飾品の音がここまで響くアクションになるとは。
室内では相変わらずの固定カメラにも関わらず、奥行きを捉え、人物移動によりその室内の構造が把握出来るという楽しさも健在。その室内の美麗さをスクリーンで堪能出来たのは至福の極み。
とにかく感動したのは李屏賓のカメラによる色彩の捉え方。あんなにも多彩な赤をひとつひとつ際立たせ、玉虫色の絹のコントラストを撮り、そして農村の藁葺き屋根ですら豊かな色々が重なり醸し出した物に見せてしまったという。
気にしつつ観ていたものの、やはりスタンダードとビスタのサイズ違いのルールが日本で撮影した箇所か否かしか解らず。
ところが。何故にそうしたのであろうかという謎だった事が後日フィルメックスで登壇した監督のトークにより判明。
簡単な話、「そのシーンの画面作りに合った画面サイズで撮っただけのこと。サイズにこだわる必要はない」(※記憶力が悪い為に私の超意訳)とのことでした。
ついでなので鑑賞しながらカット数を数えていたところ、130〜140カット(数え忘れの誤差がこの位)で、意外と割っていたという。
『黒衣の刺客』の美術設定書『唐 風尚』にはパンフにも無かった妻夫木くんと汐里ちゃん演じるキャラの詳細及び時代背景がしっかり書かれており、例によってどれだけ撮影してカットしてしまったのかと……。
それにしても妻夫木くんと舒淇(スー・チー)が出会うアクションシーンは見事な亜熱帯植物、次には白樺林が登場するという、画面サイズに拘らない以上の型破りさも超面白かったね!
因みに『黒衣の刺客』の美術設定と『拜訪刺客唐傳奇』の絵本のセット『刺客聶隱娘 電影美術世界』を台湾から買って来て頂きました。
じっくり見たかった美術が写真となり大量に載っているので数ページでも大満足の本。
刺客聶隱娘 電影美術世界


『岸辺の旅』

『バクマン。』
※胃が…つら……い。非常に面白い作品だったのですが、やはりつらい。
神木きゅんとたけるんのキャッキャッ♪よりも胃の痛さが上回ってしまったけど、こういう作品はとにかく配役で決まる部分もあるのでそこに関しては本当に完璧。
あと嘗てバイトしていた他社の大手出版社の週刊誌編集部とジャンプってやっぱり別物なんだなぁ、という点にも興味津々の出来でした。

『心が叫びたがってるんだ。』
※初っ端からやられてしまった……。
しかし何故にこれをアイドル達を使って実写で撮ることが出来ないのだ、邦画は……と言ってしまっては終わりなのですが。
限りなく近い存在なのが『幕が上がる』(こちらも傑作)。
アニメ化した最大の利点はモノローグの嫌味の無さ。
ここ暫く劇場用アニメを御無沙汰していた為にふと気付いたことだったのですが、やはりアニメって台詞量がすごく多い。
そしてちょっとした文法の違いで実写だと臭くなる台詞でも非常に効果的に心に響いてくるという事。ファンタジー表現的な妄想もとても自然。やはりアニメで作った意味があった作品。

『カンフー・ジャングル』
※かつて繁栄したカンフー映画に敬愛の意を込め、多彩なる出演者を登場させたこの映画は本編もエンドロールも胸いっぱいになり過ぎて呼吸が整わず寝込みそう……。
アクションシーンでの私の許容量オーバーという久々の体験。
シーン毎、アクション毎にコマを止めて語らねばならない程の密度の高さ。
アクションの技術に圧倒されてそちらにばかり目が行きがちですが、実はカメラワークやシチュエーションのバリエーション、そして美しさもハイレベル。陳德森(テディ・チャン)はとんでもないアクション映画を撮ってしまったものだ。

『GONIN サーガ』

『尚衣院 サンイウォン』
※オートクチュール界のドロドロと大奥及び殿中のドロドロと天才肌ニューウェーブvs努力型職人と男同士の愛憎と超ロマンスが見事に融和していて惚れ惚れする面白さ。
鑑賞前はよくある韓国時代劇のリズムかと思いきや、かなりのポップさもとても観やすくて楽しい気分にさせる一因。
そしてドンソクたん!ドンソクたん!超かわゆ!と言いたくなるマ・ドンソクによるファッションショーもサービス抜群なのでした。

『マルガリータで乾杯を!』
『恋人たち』

『俺物語!!』
※鈴木亮平くん演じる猛男を愛でる程度の気持ちで観始めたら気付くと号泣している私が……!
正直な話、少女漫画の古典ラブコメの使い古した……どころではなく骨組みまんまなストーリーなのにも関わらず、キャラによりこんなにも新しくなるとは。
そしてメインの登場人物全てが優しいのも可愛い部分。
『俺物語!!』の何が一番基本的なツボを押さえているかといったら、冒頭の中学校の卒業式。
どこをどう見てもリアル中学校男子らのエキストラに囲まれる学ラン姿の鈴木亮平という、この新世代のプログラムピクチャー感、これだけでも私は好きと言えるのであった。

『杉原千畝 スギハラチウネ』

『図書館戦争 -THE LAST MISSION-』
※解っていつつも岡田君がとんでもない事になっていた。
本当に出来る人に近接格闘術をさせ、そこに見映えも足している為に楽しい事この上ない。
基本的に狭い空間で関節・打撃・投げを行なっている為に壁の使い方が多様、と見応え抜群。なんと素晴らしく贅沢な岡田君の使い方をしているのだ。

『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』
※前半で完全に観客である若い親達を泣かせ、後半でメインとなる派手演出に持って行くのですが、去年の劇場版もこの構成だったのかしら……?(未見) そしてナビゲーター役のウィスパーが前作でもあの役だったのかしら?
例えば『エボラ・シンドローム』と同じで、気を抜く前にサービスを盛り、わんこそば状態にする作品って本当に凄い。
しかしゲスト声優が完全に親へのサービスで笑ってしまう。
そして『妖怪ウォッチ』本編前も抜かりはなく、当然妖怪ウォッチの新商品CMが流れるので、その時点で子供達のテンションが上がるわけですが、隣の席の子連れのお父さんが「えっ…これも買う…の……?」と震え声で発した様子が忘れられず。お子様ビジネスって本当に怖い!

『DENKI GROOVE THE MOVIE? -石野卓球とピエール瀧-』
※まさか人生を映画館のスクリーンで観る日が来るとは思わなかったね!
そして最後の『N.O.』では鼻の奥がツーン!としてじんわり。
しかしまりんは今も変わらずでかわいい……。
全アルバムを網羅する非常に丁寧な作品なので、初心者からコアなファンまで楽しめる作り。

『孤高の遠吠』
※クズの言動とヤクザな行為の多彩なバリエーションを目撃出来る作品。
しかも静岡の不良たちの生々しさが全編を包む緊張感に加担。
彼ら各々の中での道理はきちんと通っている理屈や言動の怖さと居心地の悪さ、それが身に降りかかるのならば嫌悪でしかないが、作品になると驚愕という喜びに。
いわゆるインディーズ作品なのですが、むしろそれが功を奏して生々しくリアルな静岡の不良を撮れたという奇跡の作品。
それで2時間以上があっという間に過ぎてしまい、ドキュメンタリーでもないのに、こんなに生々しい彼らの生態を描いた作品は未だかつて観たことがないので、やはり破格の不良映画としか言いようがないのでした。
『狂い咲きサンダーロード』との2本立てとか是非観てみたいね。


最後は【2015年 面白かった映画 特集上映&映画祭編】です。

2015年 面白かった映画 洋画編

ベスト10とかそういうのを選ぶ為に悩むのがとてつもなく面倒な私ですが、とりあえず好きな作品に関してはアピールしたい!という訳で、今年も面白かった作品を想いのままに羅列し、気ままに雑感なりメモなりを挟んでいきます。
読んで下さった方々の中に未見やノーチェックだった作品があった場合の御参考にでもなれば幸いです。
因みにコメントを書いていない作品と大好き度は全く関係はございません。
好き過ぎてコメントが無いとか他で語り過ぎて満足してしまった為にコメントが無いなど理由は多々。



【2015年 洋画編】

『トラッシュ!この街が輝く日まで』
『ジミー、野を駆ける伝説』
『絶叫のオペラ座へようこそ』

『ホラー・シネマ・パラダイス』
※ホラー愛が詰まっている作品でものすごく楽しい作品。
カサンドラ・ピーターソン様が相変わらずお美しく、しかも語り部の如く流れるような優雅な口調にうっとり。
数々のポスターアートを眺めているのも楽しい映画なのだ。

『オール・チアリーダーズ・ダイ』
※ラッキー・マッキーは我々を裏切らない!
最高過ぎて震えが出てしまった。エンドロールに掛かるノンストップMIXが体を表すかの如く、先読み出来ないリズムが続くカオス。でも単なるカオスではなく観ていて快感を覚える物を次々と出し、そう来なくちゃ!のいう落とし方。最高!

『エリート・スクワッド/ブラジル特殊部隊BOPE』

『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』
※終始笑いっぱなし。ニュージーランドにヴァンパイアというだけでも無駄に面白いのに、所謂ヴァンパイアに於ける設定をフル活用してドキュメンタリーとして活かしているセンスの良さに悶絶。
しかもセクシーと言いつつ意外と締まりのないボディなのでそれもズルい。ヴァンパイアの設定というものは現代生活に於いてどう影響するのか、という事が垣間見れるのも作り手の着眼点のセンスの良さによるもの。
何気に良い落とし方をしていてゴキゲンなまま劇場を出る事が出来るのであった。
全ての登場人物が愛おしくなってくるのだ。


『きっと、星のせいじゃない。』
※難病物の描き方に驚いた……というのも、もはや古典と化しているお涙頂戴なコテコテの作品とは完全に異なり、既に末期の病気が前提で、それを抱えつつ僅かな余命をどう生きていくかという青春映画で、この作品の公開時では多分最先端の描き方をしていたのでは、と思う。それと同時に比喩をあんなに使っているのに今時の子達の会話にも仕上げているのもとても良いと思った反面、いわゆる学のある賢い子達を描いている為にこんなも豊かに比喩表現が出来るのであろうが、もしもこれが真逆の子達だったらどうなるのであろうか?それもまた新たな物語が生まれるよな、と、天邪鬼な私は考えるのでありました。

『ドラフト・デイ』
『アメリカン・スナイパー』
『ブルー・リベンジ』
『ビッグ・アイズ』
『ミュータント・タートルズ』

『フォックスキャッチャー』
※「あれ?もしかしてそれミスなんじゃ……?」という、一瞬写った物について改めて時期を調べたらやはり間違っていた。
いや、後で必要な伏線としてそこに入れるべきなのは解っているのだけど、あの映像は格闘技好きなら見逃さない歴史的な問題点がこの名作にもあったのです。ふふふ……。

『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』
※こんなにハッピーで美味しそうな映画で笑顔になれる作品なのに終始涙が止まらず。
『フォックスキャッチャー』に於ける、若い人が観たら打ち拉がれてしまうであろう部分は年の功で既に克服しており、その次のステップの人生の辛さに直面している人に向いているのが本作。
壁に突き当たったり、谷間で足掻いて辛い時に観ると魂を吹き込まれる映画。
創作を生業にしている人、特にフリーランスの人には最初から最後まで生々しい。
この作品の為に『アイアンマン3』を断ったジョン・ファブローの魂が込められており、余計に涙無くては観られなかったのであった。
そして今時なツイッター利用法が的確なのも見所のひとつで楽しい。
ジョン・ファブローの為に様々な人達が出演してくれたのだろうが(これも実は本作で何を言いたいのかという大切な部分のひとつ)ほんの僅かなのに恐ろしく複雑な台詞を熟しているロバート・ダウニー・Jr.などそれぞれが楽しいし、私の大好物、ジョン・レグイザモが可愛すぎて萌え死にしてしまったのだった。
何から何までゴキゲンな映画、しかも肩肘張らずにも観る事が出来る素晴らしい作品なのですが、劇中で使用する楽曲がとにかく良いのだ。キューバ音楽的な物が多く占め、しかも曲の入れ方がとても粋。
単に劇伴をどーん!とは入れないのでした(特に後半)

『プリデスティネーション』
※ここ暫くラストの締め方、台詞の決め方がこんなにも気持ち良くスパーン!と格好良く震えるような映画を観ていなかったので興奮を抑えるのが辛い……! ハインラインの原作が良いせいもあるのだろうけど、こういったツボをキチンと押さえているスピエリッグ兄弟はやはり裏切らなかった。やはり一生ついていくよ!(感涙)

『アナベル 死霊館の人形』
『博士と彼女のセオリー』

『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』
※余りにすごくて頭を抱えてしまった……。
というのもメインとなる話だけでも充分に面白いのに3本分以上の映画になりそうなテーマを同時に描き、共鳴させている巧みさが素晴らし過ぎて、胸を引き裂かれるかと。こんなにも要素を盛って同時進行させておきつつも分断されないって!

『ジュピター』
※ウォシャウスキー姉弟はスケールがデカい世界観のSFを撮るとむしろそのデカい規模が仇となり、何故か不思議な事に単調になってしまうのでそろそろ止めた方が……。
でもチャニングが裸で闘ったり、どこにでも飛んで来たり、生理用ナプキンを付けたり…と、彼の使い方に関しては大満足だったね! 白泉社系少女マンガ好きだとすんなり入って楽しめてしまう世界観で、ラナ姉の乙女心炸裂作品でかわいいのだ。

『ニンジャ・アベンジャーズ』
※英語が上手になった肘井美佳ちゃんなのに登場があっという間に終わってしまって勿体無い……。
とはいえ、1作目『NINJA』よりも更にアクションが増え、忍者らしい事もしているアドキンス。
『蔡李佛』の次が本作というケイン君は何故今まで使い道が無かったのか不思議なので、どんどんアメリカやアジア映画に出演して欲しいね。
素晴らしい身体能力を持っているし良さも解るのだけど、何故かいつも全く私の目に止まらないアドキンスを初めて良いと思ったのは実は『NINJA』。勿論この『ニンジャ・アベンジャーズ』も素晴らしい。
この辺りの作品を観ると、そのアクションを形成する為にどんな格闘技など動きを学んできたのか、その人それぞれのベースになる物が比較的解るので面白いのです。

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
『ナイトミュージアム エジプト王の秘密』
『ワイルド・スピード SKY MISSION』
『ラスト・リベンジ』

『22ジャンプストリート』
※恐ろしく楽しかった! 1作目で風呂敷を広げた分、繰り返しのギャグにプラスαの要素を加えた所に下ネタ多発、今時の表現を踏まえた上でのアレな言い方、そして何よりも怒濤のラストが! そこにどれだけ手間暇を掛けているのだと。しかもカットの細かい物なのにここまでの攻め具体は素晴らしい。そして春休み(スプリング・フィーバー)幻想がここにも!

『ホーンズ 容疑者と告白の角』

『ライフ・アフター・ベス』
※次々起こる起伏に富んだ事態に翻弄されるデハーン君のバリエーションがやたらと愛おしい作品。
しかもその他の登場人物も滑稽に見えつつ、実はとても実際でも想像出来る描き方をしているので真に迫っていたり。
彼女が死んだ直後の行動とか、実際に私が間近で見たのと同じでね……。

『ラン・オールナイト』
※内容が震えるような熟年JUNEだったのも含め、何でもかんでも描けばいいというものではないというのを久々に学ばせてくれた傑作。そう、描いてないからこそキャラが膨らむという好例。そして夜のNYが35mmフィルム撮りによって色味の際立ち方が非常に美しい。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
『追憶と、踊りながら』

『ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』
※作品の大きなテーマが新マッドマックスやあまちゃんに通じる物なので、世の中の人達はもっとこの作品を観に行けばいいのですよ(本当は『MMFR』というよりも『ベイブ/都会へ行く』が最も近い存在の作品)。
そして人間の言語が文字と歌のみ故、台詞が皆無の為、見事な映像のみでの説明。家族愛、スラッシャー、アクション……と何でもあり! マッドマックスと続けて観ると非常によく解ると思いますが、台詞ではなく映像で説明する説得力はぐいぐい心を掴んでいき、作品への没頭度が違うのです。特に街に行ってからの様々なディテール、そしてあらゆる人々の描写と人種の多さも楽しい。
クレイアニメという物は立体なのにも関わらずかなり特殊な文法を持っている物なのだ、と大きな画面で観て感じた……というのは、リアリティと非リアリティの境を行き来する表現がとても自然に楽しく受け入れられるのですが、これはクレイの独特の質感が持てる技なのかと。
『ひつじのショーン』は動物と暮らしている人達には特にたまらない作品であり、本編が終わった後のほんのちょっとしたシーンでとてもホッとする素敵な作品でもあるのです。本編中でショーン達に関わってくる、とある人物のいる所のエピソードの事です。単に話を進めるだけの駒という役割だけではない、こういった人物配置も見事なのです。

『フレンチアルプスで起きたこと』
『コングレス未来学会議』
『インサイド・ヘッド』
『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』
『ゾンビーバー』
『チャイルド44 森に消えた子供たち』

『パージ』
『パージ:アナーキー』
※『パージ』は面白いホラー仕立てとも言うべき密室モノだったのに、それは『パージ:アナーキー』の為の単なる風呂敷を広げ、世界観を説明する前振りだったとは。
密室物である1作目から外に出ると“アナーキー”という題に偽りがない程の近未来の絶望的な世界が広がる一晩の描き方と終始続く緊迫感。
そして何が起きているのかという本当の意味を知っていく様子が堪らない。
更には銃撃戦などアクションも満載。エンドロールも最高! こんなにも格好良くてメッセージ性の強さを感じるエンドロールは久々だったので痺れました。そう、ここはこんなにもヤバい世界なのだと改めて認識させるエンドロール。
続編だからといって高を括ってはいけない大傑作アクション作なのです。
1の内、2の外という面白さとスケール感の違いがこんなにも面白くなるという好例。

『エクストラ テレストリアル』
『奪還者』
『彼は秘密の女ともだち』
※僅差で違ったりするグラデーションの如く様々なセクシャリティの描写が見事。

『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』
※ベンジー=ペグちんの姫状態が最強過ぎて一晩経っても私の中でベンジーインフレを起こし、ずっと咀嚼続行。
今までのM:Iシリーズはトム!トム!トム!画面はトムインフレ!だったのに、ベンジーにしか目が行かず、新ヒロインの誕生がここに。

『クーキー』
※勝手に物を捨てられる事が何よりも辛い私はタイトル前で既にお腹が痛くなったものの、師父と弟子映画としての成長冒険物語の中に想像力が豊かで優しい子供の成長する様子が重なっていき、あんな落とし方で描いたのは素敵。
マリオネットを使い実際の森の中で撮影、ほのぼので切なかったりする人形劇かと思いきや、ゆるかわ面白人形達に蠅や蟻が集るわ壮絶カーチェイスを繰り広げるわ拷問はあるわで未だ嘗て観た事の無い人形劇映画に衝撃と感動がごちゃ混ぜとなり震えた。デスロードというのは紛れもなく本当。
おまけの話。『クーキー』を観終わってロビーに出て来たら、ちびっこがクーキーのぬいぐるみを握って行き来していてにっこりしていたのも束の間、何かがあったらしくお母さんに「(クーキーを)洗濯しちゃうわよ!」と言われ、途端にお子様ギャン泣き。観た人なら解るがそれは泣く! そのタイミングでママ、非情!

『死霊高校』
『ナイトクローラー』

『ABC・オブ・デス2』
※今回、参加監督を全然チェックせずに鑑賞したらイスラエルやラテン系、アフリカの監督までいて結構様々なローカル色もあり、前回とは違った面白さが。そしてタガログ語作品にやたらと逞しいばばあが登場でもしや……!と思っていたらエリック・マッティ監督! これは嬉しかったなぁ。

『誘拐の掟』

『メキシコ・オブ・デス』
MEXICO BARBARO Día de los Muertos
※メキシコの風土や慣習、精霊など土俗的要素満載オムニバス。
それだけで充分にわくわくするのですが、最後の1編『Día de los Muertos(死者の日)』が大傑作の復讐譚。
死者の日にあの華やかなスカルメイクをし、ポールダンスを踊るダンサー達。そしてその後の展開の格好良さ、爽快さと言ったら!
やはりその土地ならではの伝承を使うのは楽しい。
このオムニバスの中の1編に「お前の魂を尻の穴から抜いてやる」といった台詞があるのですが、地球の裏側であるメキシコでも尻子玉を抜く的な事が言われていたのか!というのを知り、地球はひとつ……と感慨深くなったのでありました。

『カルフォルニア・ダウン』
※あらゆる乗り物と手段を駆使してどこにでも助けに来てくれるロック様のスーパーアイドル映画。
この内容なのにも関わらずロック様なら必ず何とかしてくれるであろうという安心感を終始抱きながら観ていられるというのは彼の持つ類稀なる才能なのでした。
大学教授の助手がやけに男前!と思ったら私の大好物であるウィル・ユン・リーだったのですが、あっという間に……だったので、日本でもっとウィル・ユン・リー出演作が公開されますように、と願うばかり。

『グリーン・インフェルノ』
※楽し過ぎた……! そしてアマゾンの緑と補色である赤の際立ち方が非常に美しい。美味しくお食事する手順も丁寧に描かれており、食と文化に対する敬意が溢れているのだ。様々な映画の要素がコラージュされているので、あれこれ探るという楽しみもあるお食事映画。
『グリーン・インフェルノ』は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に続いて好きな物ばかりが写っており、いわゆるテンションが上がるよりも余りに気持ち良くてセロトニンが大放出し、幸せになってリラックスしまくった映画でございました。今年はこういった作品が続いているので本当に幸せ。
本作を観つつ、なんだかREDとは画面が違うなぁ、特に緑色の発色…と思っていたらCINEMA EOSを使って撮影されていた。もしかしたら私、CINEMA EOSで撮影された映画を初めて観たかも。アマゾンの奥地での撮影だった為に持ち運びが楽な機材を使用したのかな、と想像。

『EDEN/エデン』
※この作品を観て、お腹がしくしく痛むのを超して吐きそうになったり、その場で布団に潜り込みたくなる辛さを感じなかった人達は本当に幸せだと思います。よくありがちな事ですが「好きな事をやれるのが本望」とか言われるのは実は辛いものなのですよ、本来。

『ウォーリアー』
※撃沈。久々に見事に魂を抜かれた……。
けど実は難点が。試合の撮影がハンディ故に手ぶれを多用している為に本来、粗が見えてしまう肝心の部分が誤魔化され、尚且つカットが即、観衆等に切り替わるので本当の試合のつもりで観るとものっすごくストレスが溜まるのだった。巧みさは罪。
試合をカット多用で見せたりオクタゴンのコーナーで肝心な部分を隠していたといっても、きちんと試合の流れを組み立てている為にコアに格闘技を観ていない人なら多分、気にはならない部分だとは思うのですが……。
それに対し色々と試合に関して突っ込んで観つつも『激戦 ハート・オブ・ファイト』は金網等で隠さず試合を観せていたのは見事だと改めて感じてしまった。
内容はさながら、とにかくトム・ハーディの内に向かう芝居が素晴らしい。最早孤高の域。下唇を噛む癖まで
もが完璧。そんなキャラ作りなのにも関わらず結果として表現している事は広大なスケール。
それに対し兄は一見外向きなキャラなのに誰に対しての試合かといったら内向きでミニマム。この対比が本当に良い。
既にソフト化されていたとはいえ、オトカリテの御蔭で初見がスクリーンで本当に良かった……。
愛おしいのにあんなに辛いとは。『ロッキー』等の呪縛から既に解放されたアメリカのプロレス/格闘技映画の中でもまた新たな一歩を歩んでいるのが『ウォーリアー』なのです。

『マッドストーン』
※豪州暴走族文化映画と思って観ていたら予期せぬトゥーカッター様無修正映画でふぉっ!と釘付けに。
しかもやたらとエロい男同志のチューまでも……。
LSDの代わりに大麻でトランスというヘルシーさのある『イージー★ライダー』的な作品。
音楽は最高だしバイクの連なる走行は本当に凄い。

『アントマン』

『マキシマム・ブラッド』
※香港の資本が入っての制作(プロデューサーはカナダの香港人の気配)。
最初10分位、ヴァン・ダムが全裸で氷風呂→全裸で部屋を彷徨くのに氷やガウンの紐で巧みに股間が隠され、更には腎臓を抜かれている為に終始苦悶の表情なので、最後まで中腰で前のめりで落ち着かない状態で鑑賞。ありがとうございます。満腹でした。
そんな全裸及び苦悶の表情ヴァン・ダムに冒頭から全わたしを摑まれてしまった上に兄弟物ですよ……! 昔、因縁があったが今は仲間という契父のような華人の黒社会オヤジも登場という、なんだこの美味しく頂くしかない映画は! 上映がレイトのみの1週間最後の日に来れて良かった、と思った作品でした。

『ターボキッド』

『マジック・マイク XXL』
※こんな素敵なロードムービーになるとは。
パーティが終わりシュン……となる気持ちで締める1作目とは違い、気持ちが上がりまくって得も言えぬ幸福感に包まれたまま劇場を出る事が出来る最高の作品。
チャニングの作業場から始まり、ダンスの舞台が次々と変わるのが本当に楽しい。
女性をもてなす最高の作品と同時に、女性も男性も何を抱えているのかを理解しやすくスマートに語っているので是非とも男性にも観て頂きたい。
あと登場する女性の皆さんがいわゆるモデルの様な人達ばかりでなく、人種、体型、服装、更には職業も様々で、地に足着いた人々というのが良さを増してる。
消費される側のプロフェッショナルが抱えるプライベートの悩みも描き、更には消費する側の女性客の真意は彼女らや主要の女性キャストとの会話からではなく、サラリとステージのMCで語らせるこの粋。日本映画がここまで到達するにはどれだけ時間を要するのであろうか。

『神々のたそがれ』
『ヴィジット』
『マイ・インターン』
『コードネーム U.N.C.L.E.』

『Re:LIFE リライフ』
※定期的にシャンテで上映される私のお腹がシクシク痛くなるシリーズ(ex.『ヤング≒アダルト』『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』)の新作が『Re:LIFE リライフ』。これを観ると映画の構成に対して知識が無い人でも三幕構成とは何たるかが説明によってでなく、感覚として解るんじゃないかしら。

『リトルプリンス 星の王子さまと私』
『黄金のアデーレ 名画の帰還』

『暴動 バトル・プリズン』
※ホッケーマスクを改造して黒く塗装し、サイドに蛇マークを入れた刑務所の看守達という中2魂炸裂映画。
ところが主演のマシュー・リーズ以外のキャストも格闘技経験者と見え、がっつり本物の動きを見せてくれる上に引きのカメラで全体を撮り、流れを見せてくれたので大満足。
いわゆる男の刑務所物というだけでなく、同時に女囚物としても描かれいるお得映画。女囚同士のファイトがヌルいキャットファイトなんかではなく、素晴らしい格闘家な動きが見れる。
というかこの刑務所、格闘技を嗜んでいないと生き残れないね。怖い!
背後のエキストラの動きまでがどう見ても経験者的な構えなのも見逃せないのだ。

『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』
※お馴染みのあのシーンこのシーンが満載、しかも動くので楽し過ぎ。後ろの年配の外国人の御夫婦もウォッホッホッ!と笑っていてそれも幸せ効果に。更にチャーリーの成長物語でもあり、優しく勇気付けられ、素敵な作品になっていて涙。ビジュアルの楽しさはあの絵の質感なのにほぼ全キャラの髪毛だけやたらとリアルな事。因みに一番のツボはよく見るとスヌーピーの頭の毛のみが微妙にふわふわ逆立っている事。こういうのがたまらん! ウッドストックも頭に薄っすら羽根があるのだ。

『サクラメント 死の楽園』
『わたしはマララ』

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』
※子供の頃から観ていた体験により補完して楽しませるってある意味ズルい作りよね。
CG技術の進化により様々な物が繊細に描写される為、どの映画を観ても平均化して凄くなっている分、個性が無くなってしまうのだなぁ、と寂しくも思ったり。
しかしザ・レイド組が! トルーパーがトンファーを振り回す謎のアクションをしているのは間違いなく彼らがアクションを付けたよね……? ねっ!!

『クリード チャンプを継ぐ男』
※余りに語りすぎた為にここに書くための感想がもう無いです
。『ロッキー』シリーズを愛し続けてきた我々にとって御褒美のような映画。
タオルじゃ足りない、バスタオルで、いやタオルケットぐらいでないと!と、我々を涙でびしょ濡れにさせてくれました。

『リザとキツネと恋する死者たち』
※観終わった後は脳味噌の9割をトミー谷で占められる、可愛くて死人だらけなのに笑ってハッピーになってしまう映画。
しかもハンガリーで日本の九尾の狐伝説(玉藻前の伝説)がこのような形で作り直されるとは素敵な事ではないですか。
ゴキゲンな日本のグループサウンズにインスパイアされたり北欧の歌謡曲など素敵な音楽の数々。
そして悲劇が次々と起こるのにとてもキュートで楽しい愛おしい作品。
初見は大阪アジアン映画祭、誕生日に川口のSKIPシティ、そしてクリスマス……と、トミー谷と過ごしている今年の私。
トミー谷の歌は勿論、ゾルタン刑事のテーマ2曲も最高。もうね、ゾルタンは切ないのです。一途なのです。トミー谷とはまた違ったきゅんきゅんさがあるのでした。

『ストレイト・アウタ・コンプトン』
※余りにも面白くて最高……! 私がほぼ点でのみ知ってる名称/人名と事柄(要は薄い知識)が線でどんどん繋がっていく為、その興奮たるや。これこそが知識が無くても解る、丁寧かつエンタメに仕上げた作品というもの。
しかも言うまでもなく歌詞の内容が展開に絡んでいく面白さ。
日本ではこういったのが作れないよなぁ……いやある! とてつもなく面白い音楽があるではないか! そう、日本ならジャパコアでやればいいのです。あのバンドやこのバンドがあれやこれや……怖ぇぇぇ!という。問題なのは世間的には一世を風靡していないジャンル…だよね……。

『完全なるチェックメイト』
※想像していた物とかなり違って御褒美を貰った感じ……なのだけど、これは胃が痛くなるどころか、ある種の「体調」が悪い時に観るとちょっと危険な気が。その時に発する表現は世界共通なのだな、と震えが止まらないのであった。
実際のフィッシャーの最後なんて特に。



次は【2015年 面白かった映画 日本&アジア映画編】です。

『百日草(百日告別)』

●『百日草(百日告別)』
 (監督:林書宇(トム・リン)/出演:林嘉欣(カリーナ・ラム)、石錦航/石頭(シー・チンハン)、柯佳嬿、馬志翔、張書豪、李千娜)

百日告別海報


発生した玉突き事故による大惨事によって最愛の人を失った男女がそれぞれ喪失感とどう向き合っていくか、供養をするか、そして如何にして前に進むかを描いた作品。

一人が失くしたのは妊娠中の妻。
一人が失くしたのは結婚式を控えた婚約者。

中華圏好きな人々にとって大好きな文字である「囍」がこんなにも辛い存在になってしまうとは……。



このふたりの男女が接触するのは法要のために山の上にある寺へ行った際のみ。
しかも誰の法要のために訪れたのかという程度の会話しかしていないのにも関わらず、たったそれだけの短かい出会いでお互いの心情が理解出来てしまうのは同じ境遇だから。
偶然にもふたりは同じような行為や行動をしており、自分の心の整理をしている最中の人達だからこその気持ちの通じ方をしてしまったのです。

起こった事故や葬儀そのものの描写は状況説明の、ごくごく短いシーン程度。
初七日、五七日(死後35日目)、七七日(死後49日目/満中陰・忌明け法要)そして百箇日こと卒哭忌、
つまり最後は泣き叫ぶのを終わりにする日で締めるというのを段階を経て描く構成となっています。
これらは何を意味するか。
法要とは愛すべき人に対しての供養と同時に、残された人々の悲しみとつらさを段階を経て克服し、心の整理をしていく区切りの儀式だということを本作は観客に対し明確に、しかも体感として理解させてしまったのです。

「儀式」として描かれているのは法要だけではなく、ふたつの「傷心旅行」が描かれています。
それぞれ亡き愛する人と寄り添いつつ、自分の心の中を整理するために旅に出るのですが、誰にでも思い当たるであろう「これをこなしてクリアしなければ自分は前に進めない」という思い込みをした行為をふたりともするのです。

例えば美食の旅のはずが前述したような自分に課した目標をクリアするだけとなり、味も何も感じず、まるで砂を噛むような食事をひたすらこなし続け、行った店に★印を付けていく。
ところが、どんなに美味しい料理店だとして絶対に五つ星にはならない。
それは欠けている残りひとつの星は愛する人と一緒でないと絶対に塗りつぶせないものだから。

もはやそういった自分に科した使命により、ひたすら食べ続ける姿は自殺にも似た行為とも受け取ることが出来、程度の差はあれど誰もが似た経験をしたことがあるであろう行動の数々が劇中で積み重なっていく――――。
観客である我々が思わず疑似体験をしてしまう辛さがスクリーンには広がっていたのでした。

愛する人の忘れ形見であるピアノを赤の他人にデリカシー無く触れられ、しかも雑に扱われ、「仲間」という名目の単なる外野でしかない人々に慰めの言葉をかけてもらうも、今の自分にとっては不必要な気遣いはピアノの音と共に酷いノイズにしかならないのです。

そんなピアノの存在が見るのも辛くて部屋の隅に隠してしまい、再び立ち上がって一生懸命になって取り出すというシーンがあるのですが、それは悲しい思いを乗り越え、再起するには並大抵の体力と精神力が必要というのを行動で表しており、素晴らしい比喩を見せてくれたものだ、と心から震えたのですが、このような言葉にはしていない演出が随所に散りばめられている『百日草』。

この映画と共に観る人それぞれが抱えている想いを思い出し噛み締めながら、ずっとずっと心の中で大切に温め続けていく、そんな作品です。
今生の別れは基本的に死となってしまいますが、身近な別れなどでも置き換える事はいくらでも可能なので、本作を観ると、どんな人でも何かしらの想いが生まれるのではないでしょうか。


因みにこの作品を撮った林書宇(トム・リン)監督は3年前に奥様を病気で亡くしています。
つまり本作は監督にとっての心の整理をする為の「儀式」の役割を果たしているのです。

《百日草の花言葉》
「不在の友を思う」 「遠い友を想う」
「別れた友への想い」 「絆」 「幸福」


そして 
「いつまでも変わらぬ心」

『レイジー・ヘイジー・クレイジー(同班同學)』

●『レイジー・ヘイジー・クレイジー(同班同學)』
 (監督:陸以心(ジョディ・ロック/出演:郭奕芯(クォック・イッサム)、廖子妤(フィッシュ・リウ)、麥芷誼(マック・チーイ)、王宗堯(グレゴリー・ウォン)、陳靜、林婉靜、邵音音、蔡潔、盧惠光、曾國祥、徐天佑、蒼井空、李拾壹、江嘉敏

同班同學海報


彭浩翔(パン・ホーチョン)作品の脚本3本+プロデュース作品の脚本2本を経て、ついに監督デビュー果たした脚本家の陸以心(ジョディ・ロック)。
元からジョディさんの脚本で本作を制作することは決まっていたそうなのですが、プロデューサーであるパン・ホーチョンが女性監督を探しており、「それなら私に撮らせてよ!」ということで初監督作として本作が決まったのだとか。
プロデューサーの力とそれをサポートするスタッフの力って偉大……。



パンちゃん作品を観るたびにこの人は何故にここまで女心を繊細に、そして奥の方をえぐるような的確さで描けてしまうのか?と、疑問にすら感じていたのですが、本作を観てああ、やはりそうだったのか、と確信。
もちろんジョディさんの起用以前から「女性の事は解らない、難しい」などと発言しており、その上であれらの描写が出来ていたパンちゃんなのですが、ジョディさんが加わる事によって若さ溢れる脚本となり、より一層きめ細やかで複雑な女心を描くことが出来ていたのです。

但し、監督としては当然ながら未経験の素人同然な上、自身で書いた脚本を演出せねばならないという大きな難題が待ち構えていたわけですが、そこはキャリアのあるスタッフの皆さんにかなり助けられてここまでの仕上がりになったのだと思わざろう得ない部分も多少なりとも感じてしまったのは致し方無い事。
実の所、香港での本作の感想を読むと、見かけ倒しで宣伝と内容が一致してねーよ!という意見もちらほら。
センセーショナルなテーマ、そして香港映画に於いてヌードもある為にニュースにも頻繁に取り上げられたので、バジェットの多い作品を観に行く感覚となってしまったのかも、と想像してみたり。

今まではパンちゃんが脚本や現場で面白い要素や演出を盛り、作品としての面白さや深味を増していたのですが、それらを完全に削ぎ落として原石のような状態と化してフレッシュさ溢れる仕上がりとなっていたので、私個人としてはインディーズ・ムービーにちょい足しした程度の加減で作った、気持ちが一直線に表れた作品として『レイジー・ヘイジー・クレイジー』はとても愛らしい素敵な出来になったと思っているのです。

女子高生3人の友情、仲間意識、援交、嫉妬、恋愛及びセックス観、家族との関係などを瑞々しく描いた作品で、女性なら例え共感はせずとも納得してしまう描写の連続。
援交を始めるにせよ少女たちにはそれぞれの事情があり、よくある援交のタイプ(※但し我々が思い描く日本の援交のスタイルというよりも元締であるクラブのママがいる援交“クラブ”に近いもの)もあれば、おぼこい娘が好きな男性ひとりに囲われる愛人スタイルもあり。

内容が内容だけに当然ヌードシーンもあるのですが、一部のシーンを除いて、それらの裸はいわゆるエロを意味する裸なのではなく、彼女らの心情の吐露や素直さの表れで、言葉通りの「裸のままの女の子達」を意味する本音のシーンとなっているのです。
体育の授業後のシャワールームで裸になり、彼女らの根城となるアパートの屋上で裸になり、そして裸になって浜辺を駆けまわるという。
あくまでも性的な記号のヌードなどではなく、解放と開放のダブルミーニングにより、前に進む為の全裸なのです。

エロ目的以外で絶対に必要であるヌードを撮ってみたいという、女性の目線ならではの表現の仕方。
解放観に溢れ、未来に向かう姿の表現がまだまだ青臭いと感じてしまうのも監督第一作ならでは。

そんなキラキラと輝く青春につきものなのはもちろん恋愛でありセックス。
援交をしてしまう女の子達なので、セックス観に関しては結構オープンだったりする為、それによって引き起こる友情と男女間での問題も発生。
しかし女性による視点で描かれているので、「気軽にセックスする女の子とお付き合いする純朴な彼女」というのを無意識に差別をし、関係を深めようとする男のズルさがきっちりと複数描かれているのもある意味、見所。
鑑賞した男性らはその部分に対してどう感じていたのか、はたまたハッとさせられたのか等、その反応が私の興味の対象だったり。

最近でこそ青春映画が作られてきた香港映画界。
4年前の台湾映画『あの頃、君を追いかけた(那些年,我們一起追的女孩)』の爆発的ヒットに加え、2015年の秋、香港で観客動員数を塗り替えている『我的少女時代』の存在により、これから先、香港製の青春映画が増えてくるのかもしれません。
その先駆け的存在として、こういった若い同世代のための作品がようやく香港で、しかも女性の手によって生まれたという事実を知っておく為にも必見の新作映画です。
実は一昨年のストリートダンス青春映画『狂舞派』の大ヒットにより、イマドキな若者映画が一気に増えるかと期待していたのですが……残念ながら大して無かったですね。

『疾風スプリンター(破風)』

●『破風』
 (監督:林超賢(ダンテ・ラム)/出演:彭于晏(エディ・ポン)、チェ・シウォン、竇驍(ショーン・ドウ)、 王珞丹(ワン・ルオダン)、連凱(アンドリュー・リン)、歐陽娜娜(オーヤン・ナナ)、陳家樂(カルロス・チャン)他

破風海報


《破風》それは《風除け》を意味する言葉。
つまりロードレースに於けるアシストの意味。

台湾南部自転車ロードレースの強豪である炫光車隊(チーム・ラディアント)に所属する男子3人がライバルチームと戦い、台湾各地で連戦を繰り広げて台湾中を廻るロードレースパートなのが前半。

中盤はあれよあれよという間に何故だか恋愛パートにシフトして「ライバル」の意味合いすらも変わってしまう。

そんな恋愛ドラマがどんどん進んでしまい、そちらがメインの話となってしまうが為に、まさかこのままラストまでいってしまうんじゃ……?と不安になるも、更なる「えっ!?」というびっくり展開が怒濤の如く発生。
そこでとんでもない力技を発揮するのですが、いわゆる無茶苦茶な展開ではなく、見事にきちんとロードレースの話に戻し、興奮のラストで締めるという作品。
ネタの特盛り全部盛りに加えて、更に汁だくにしてしまったような映画。
そんな状態なのにも関わらず、ひとつひとつのエピソードがバラバラにならずにどーーーん!と綺麗なエベレスト状態で高くそびえて盛られ、一品として提供されるわけなのですよ。
ダンテの神曲の新章がまた新たなステージに到達してしまったというものです。



ロードレースに関して見事に無知な自分が観ても自転車競技がなんたるかが実況解説により理解出来る仕組みになっている丁寧さなのもとても嬉しい作品。

ロードレースという団体競技でありながら、個々の闘いも同時に描いている為、俯瞰と主観が混在しているような状態を両立させているので、先に書いた特盛り感が余計に増して感じられるのでありました。

しかも台湾中を巡るレースが故に「上から看る台湾」ことドキュメンタリー映画『天空からの招待状』を彷彿とさせる映像美で綴られており、景観の美しさや地形の多種多様性を自転車に乗りつつ楽しめる目線で撮られたカメラ、地面ぎりぎりという低位置撮影カメラ、そして上空から……などと様々な視点から観ることが出来るのはとにかく圧巻。
レース中の撮影も、特にこの台湾パートが試行錯誤していると見え、そこを見るのも面白いのであります。
走行する自転車の背後からカメラ搭載バイクが追跡撮影をしているのですが、中継車と見せかけて、それがしっかりと画面に写り込んだままというシーンなんていうのもあり。
そしてそのバイクで撮られた映像が同時にそのシーンで使われる為に「このカメラで撮影していたのがこの映像なのか!!」と思わず言ってしまう編集、つまりメイキング映像と完成映像を同時に見せられる半ドキュメンタリー映画ともいえるのです。

今回の林超賢(ダンテ・ラム)監督はドラマの中で登場人物らをいじめない代わりに『激戦 ハート・オブ・ファイト』に続き、キャストには長期トレーニングをさせていたのですが、その結果、撮影直前に主要キャストのひとりであった阮經天(イーサン・ルァン)が怪我により降板。
その代わりとして『サンザシの樹の下で』の竇驍(ショーン・ドウ)が急遽登板となったという経緯があったのです。

そう……。並走しながら手を繋ぎ、そこでバトンタッチという最高にキュンキュン♡してしまうシーンが本当なら彭于晏(エディ・ポン)とイーサン・ルァンだったはずなんですよ!!
……とはいうものの、好演したあっさり薄めなルックスのショーン・ドウと大きな子犬であるぽんスケ、といった良い対比が生まれたので、結果的にこれで良かったのです。

男達の友情、男達の特訓、男達の闘い(以下「男達の」は略)ライバル、師弟関係(しかも一部、やけに艶やかにふたりっきりで風呂にて密談をするという謎なシーンまであり)、裏切り、荒ぶり、嫉妬、不正行為……などなど。
BL連続ドラマ1クール分以上の要素が2時間に凝縮されている上にプロとアマの違いによる確執と恋愛が同時にぶっ込まれているのです。
つまりこれだけ男だらけの濃密密着いちゃこらどつき合い……どころかどつき愛があるのですから、この作品に関しては男女の恋愛なんて物は無駄なノイズでしかないのですよ!
いや、キャスティングやスポンサーなどの大人の事情があるのは理解しているつもりなのですが。
とはいえ、よくぞまぁ最終的にここまで交通整理が出来たな、と感心するばかり。

そんな恋愛パートはバッサリとカットし、ほんの一瞬だったのに鼻血を噴いてしまった男達が連なって脚のマッサージをし合うカットを合間合間に入れてくれたら良かったのに!
男だらけのマッサージ版『ムカデ人間』は本当に最高でございました。ごっつあんです!

『香港、華麗なるオフィス・ライフ(華麗上班族)』

●『香港、華麗なるオフィス・ライフ(華麗上班族)』
(監督:杜琪峰(ジョニー・トー)/出演:張艾嘉(シルヴィア・チャン)、
陳奕迅(イーソン・チャン)、王紫逸(ワン・ズーイー)、郎月婷(ラン・ユェティン)、
周潤發(チョウ・ユンファ)、湯唯(タン・ウェイ) 他)
『スリ(原題/文雀)』の時点で杜琪峰(ジョニー・トー)監督はミュージカル好きという可愛い一面が判明していたのですが、それを匂わせる程度ではなく真っ向勝負、しかもびっくりする程のアバンギャルドな舞台セットで仕上げたのが『華麗上班族』。
本作のプロデューサーでもあり女性社長役も演じている張艾嘉(シルヴィア・チャン)により2008年から2010年にかけて上演された舞台劇『華麗上班族之生活與生存』がオリジナル。
それが2013年に大陸でドラマ化。
撮影が6月に始まり同年9月に撮影完了……しているのにも関わらず実は未だ放映されていない模様。
どうやら2016年にはテレビ放映されるようなのですが、それも正確な日時が決まっているのかどうかすら現時点では不明。
そういった大陸のテレビ事情が全然解っていない私にとってはとても不思議なシステムだったりします。
どうなることやら。

リーマン・ショックの陰の元、ビルが立ち並ぶ香港とも何処とも言えぬ架空のとある中心業務地区(でも駅の名称は「大香港」站!)にそびえ立つ高層ビルの99階にある会社『眾信集團』のオフィスの人間模様を描いているのがこの作品の概観。
そのオフィスで女社長として切り盛りしているのがシルヴィア姐さん。
社員であるのが陳奕迅(イーソン・チャン)や財務部の湯唯(タン・ウェイ)、そして取締役会長が周潤發(チョウ・ユンファ)兄さんというスペシャルな会社なのです。
そこへ入社してくる男女の新人ふたりが王紫逸(ワン・ズーイー)と郎月婷(ラン・ユェティン)。
実はこのふたり、トーさん映画に出演経験ありなのです。
そう、阿祖(アジョー)と小敏(シウマン)という、『名探偵ゴッド・アイ(盲探)』でキモとなるふたり!
正直な話、前出の皆さんが素晴らしくスタァ☆な為に余りにも地味に感じてしまい、少々可哀想とも言える辺りがこの映画の全てを表しているとも考えられます。
つまり見事な程の社畜映画となっているのです。
正直な話、リーマン・ショックの影響を受けて……という今更感がある内容なのですが、そこに香港の社畜事情をこれでもか!とこってり濃厚に描き、しかもそんな厭な内容をわざわざミュージカル映画にしてしまうという、とち狂ってるとしか思えない無駄感。
それって最高ではないですか!
無駄そして意味の無い事って超楽しい……!
舞台劇をテレビドラマと映画というふたつの媒体で描き直すのに差をつけるのは当然でしょうが、本来、よりリアリティに近い文法となるのが映画なのですが、オリジナルの舞台よりも数十倍増しで別次元の仮想の何かに行ってしまっているのです。
この映画もシルヴィア姐さんが脚本となってはいるのですが、その下に続くもう一人の脚本家の存在、それはトーさんの片腕でもある気の狂ったような脚本を書く韋家輝(ワイ・ガーファイ)……。
シルヴィア姐さんがメイン脚本を書き、ワイさんがお直ししたのかなと、この出来を見てしまうと考えずにいられないのです。
そんな社畜映画で何がそんなに大変な事になっているのか。
正直な話、観て!としか言い様がないのですが、単なるミュージカル映画ではないのです。
全シーン、何故にこんなセットになったのだ!?という衝撃的なセット。
開始3カット目から「なんなんだ、この絢爛豪華な『ドッグヴィル』は!」……と、だだっ広い何もない撮影スタジオに組まれた梁だけで構成された状態の病院のシーンに度肝を抜かれ、観ていくうちに次第に頭の中に浮かんだのが「私、この空間、よく知ってる……。アーロン・クォックのコンサートだ……!!」。
つまり共に張叔平(ウィリアム・チャン)の美術。
言うまでもなくアーロンコンサの方が攻めまくった舞台設計ではあるのですが、文法の違いでコレを映画に持ってくるとは。
因みに説明しておきますと張叔平というのは香港のトップとも云うべきアートディレクターで、『花様年華』など王家衛(ウォン・カーウァイ)作品のあのうっとりする様な美術、衣裳、そして編集を手掛けている御方。
そんな人が別方向に本気を出すとパリっ子もびっくりなアヴァンギャルド・アートが出来上がってしまうという。
つまり回転しないスケルトンステージのアーロンコンサの舞台セットでイーソンが高らかに歌い、マゾは一撃で殺られるタン・ウェイちゃんを堪能出来てしまうのです。
壁を排除し、梁しか残していないような削り取ったのに派手なこの前衛芸術セット。
住居の奥に屋外が抜けて見えたりするのですが、いきなり婆ちゃんが段ボールを大量に積んだでっかいリヤカーを押して通り過ぎるという香港の路上ではお馴染みの光景が登場し、生活感の無いセットとの余りのギャップに受け身が取れなくなるほどのシュールさ。
実はもう1シーン、そういう事が起きていたのですが、こちらのインパクト勝ち。
御覧になった暁には御確認を。
ここでひとつタン・ウェイちゃんの事も。
とにかく素晴らしい!
今まで以上に素晴らしい!
もうもうもうもうタン・ウェイちゃんに恋しちゃう。
恋に堕ちちゃう。
それ程に魅力が炸裂しているのです。
彼女が魅力的なのは毎回の事なのですが今回は特に!
似ても似つかないのは解っていつつも、彼女の真似をして真っ赤なルージュを引き、ヴィヴィアン・ウエストウッドの眼鏡を掛けたくなるのです。
タン・ウェイちゃんに恋しなかった人、そして何よりもこの壮大なる無駄感を楽しめなかった人は人生を損してると思います。
『華麗上班族』とはそんな映画なのです。
出来の良し悪しとはまた別問題として。
……というのも実は楽曲担当をしたのが台灣の大御所ミュージシャン、羅大佑(ルオ・ダーヨウ)。
『GF*BF(女朋友。男朋友)』のあの印象的な名曲『家』は映画の時代とテイストに合っていた為に非常に良かったのですが、正直な話、『華麗上班族』のアバンギャルドな画面には不釣り合いと感じる程にもっさりと垢抜けず、既存のミュージカルでも使われていそうな予想に何ひとつ反しない楽曲の数々となってしまっていたのです。
なのに何故にこの人を起用したか?
だってシルヴィア姐さんの元カレだからね!という大人の懇ろな関係がそこには……。
元カレに仕事を振るシルヴィア姐さんのやり手っぷりは流石でございます。
安く請け負ってくれたのかな?とか、無茶な短期間の日程で曲作りを頼んだのかな?等、邪推は尽きないのでありました。
ところが。
そんなもっさりな曲もかのイーソン・チャンが歌うとなると話は別。
歌唱力による表現力の高さがあると力強さで楽曲の欠点までもをねじ伏せ、更には持ち上げてしまう凄さ。
ただ、一番残念だったのは盧海鵬(ロー・ホイパン)がエレベーターのドアボーイ♡を演じているのですが、いきなり歌い出し、くるくるっと華麗なステップでエレベーターに案内する位の事はして欲しかった……。
ほいぱんは歌って踊れる人なのに!(大抵、何かのパロディでコスプレ)
そんな悶々が晴れない楽曲をどうすればいいか?と勝手に提案致します。
このアヴァンギャルドなセットにタメを張れる音を作れる人が香港にはいるではないですか!
そう、新しいことを次々と取り入れてはピコピコな音を作りまくっていた人、それが雷頌德(マーク・ロイ)!
知らない方に御説明致しますと、当然、様々な香港明星に楽曲提供をしているミュージシャンではあるのですが、Perfume=黎明(レオン・ライ)にとっての中田ヤスタカ=雷頌德、といった存在の人なのです。
こんな適役が香港にいるにも関わらず、スルーしてしまうなんてもったいなさ過ぎ……。
因みにユンファ兄さんは主要メンバーの中で唯一、歌を披露しなかったのですが、それは「絶対に歌わない」と言った為、とシルヴィア姐さんが語っておりました。
そこで私や友人らの間では『周潤發 演唱會實況』というライヴ盤が即脳裡に浮かぶのでありました……。

演奏も会場の様子も全てがスゴいライヴ盤なので、万が一、どこかで見掛けた場合には迷わず購入して下さい。
持っているだけで一生語ることが出来ます。
歌い出す前の演奏からしてとんでもないことになっており、更には会場にいる親戚の子供達との緩すぎるトーク等々……。
刺激溢れるライブとなってます。
実は本作は3D上映もされていたのですが、現地でその上映で鑑賞出来た人は本当にラッキーだと思います。
ジョニー・トー作品とはいえ日本で一般公開は無い気がするので、是非ともソフトを手にしてみてくださいね。
華麗上班族2